うまい、やすい、はやい――。あの吉野家の牛丼が18日に「復活」する。牛海綿状脳症(BSE)による米国産牛肉の輸入停止の影響で、販売を中止してから2年半余。牛丼はやっぱり、米国産牛肉に限るのだろうか。
■トモちゃんも…午前11時から100万食限定 「牛丼復活祭」「1日全国100万食限定」。そんな宣伝文の躍る垂れ幕が今、全国約1000の吉野家を飾っている。「当日は午前11時から、各店長のかけ声と共に販売を始めます」と吉野家ディー・アンド・シー。利用者には記念の手ぬぐいを配り、復活祭を盛り上げる予定だ。同社広報担当は「脂身がオーストラリア産とは違う。懐かしの味を楽しんで」と呼びかける。 並盛の価格は380円で、輸入停止前に比べると100円高い。米国産の輸入量がまだ少ないため、毎日販売するのは当面、東京・築地と北海道内の店舗に限られる。 愛好家の期待も高まる。テレビで「ツユダク好き宣言」をした歌手の華原朋美さん(32)もその一人。「こくのある味が大好き。ずっと豚丼を代わりに食べていましたので、18日は当然、並んでも食べます」と待ちきれない様子だ。 ■豪州産も自信 では、米国産でなければうまい牛丼は出来ないのか。「オーストラリア産も日進月歩しています」と異を唱えるのは豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)だ。同国産の05年の輸入量は約40万5000トン。02年以前に比べ、約10万トンも増えた。「特に穀物肥育牛の伸びが著しい。牧草飼育に比べると脂身が多く、日本人の味覚に合う」と続けた。 「肉質に合わせたつゆを常に開発しています。味には自信がある」。そう胸を張るのは約700店の「すき家」を展開するゼンショーだ。しょうゆベースのさっぱりした味が特徴の牛丼は、100%穀物肥育の同国産。「米国産にはまだ心配がある。食の安全を求める消費者の要望もあります」 同じく、約700店を展開する松屋フーズの牛丼も豪州産だ。「結局は好みの問題でしょう。松阪牛を使えば最高の味になる、というものではないでしょうから」と指摘した。 ■輸入の試金石 米国産か豪州産か。牛丼大好きという経済評論家の森永卓郎さん(49)は「吉野家が使用する米国産の部位は脂が多い濃厚な味で、マグロで言えばトロ。輸入停止中に豪州産を使用していたら、イメージダウンは避けられなかった」と話し、吉野家の「こだわり戦略」を評価した。 米国産牛肉の利用拡大には、輸入量増加による価格低下も必要だ。だが、所管官庁である農水省の足元では思わぬ「反乱」が。職員用の食堂で牛丼などに豪州産を使用しているのだ。夕刊紙やテレビなどで「安全というなら、なぜ米国産を使わないのか」と批判された。 「一般の人から苦情電話もありました」と同省厚生課は認める。ただ、「委託業者に任せています。原材料について、指導はできません」とも。当の業者は「米国産は流通が少なく、3〜5割も価格が高い。商売にならないので」と回答。米国産の弱点を図らずも明らかにした。 吉野家では今後、10月1〜5日、11月1〜5日に限定販売を実施。それ以降は未定という。別の牛丼チェーンの広報担当者は「吉野家の牛丼がどれだけ、食の安全にこだわる消費者に受け入れられるか。自社が米国産を導入するかどうかの、判断材料にしたい」と見守っている。 ■ 吉野家「吉牛」18日に販売再開、即日完売予定!? ■ 吉野家 牛丼が18日に「復活」 食べる? 見送る?