松井秀喜、復帰戦でいきなりの4安打パフォーマンス――。そんな中でも、カムバック物語の最大のハイライトシーンとは、やはり常に最初の打席にやって来るものだ。12日(現地時間)のデビルレイズ戦は、試合開始直後からヤンキースの猛攻が続き、1回に4点を奪って、なおも1死一、三塁。そんな場面で、松井秀喜の約4カ月ぶりの打席が回ってきた。
午後7時33分。ティム・コーコランの4球目のカーブを、松井は泳ぎながらも、とらえた。小飛球がセンター前に落ちてタイムリーヒットになると、たどり着いた一塁ベース上で松井は晴れやかな笑みを見せた。
「真っ白な気持ちで打席に立って、自分がどうなるか楽しみ」 試合前に松井はそう語っていた。その言葉通りの気持ちで臨んだ再出発の打席。そこで結果を出して、塁上で浮かべたのは真っ白な笑顔だった。 完ぺきなカムバックにチームメートも苦笑い それにしても、松井秀喜の節目の試合、注目される試合での勝負強さには、今さらながら驚嘆させられるばかりである。 今季絶望と思われたケガから必死に立ち直り、復帰戦では得点機で初打席に立ち、いきなりタイムリーを放つ。そして、4打数4安打……出来過ぎである。これではまるで映画のストーリーではないか。 こんなパフォーマンスを見せられては、ヤンキースナインも半ばあきれるしかない。試合中も、4本目のヒットが出たときには、多くの選手たちが苦笑いを浮かべるシーンがTVモニターに映し出された。そして試合後も、主砲を取り戻した同僚たちの歓喜は続いた。 「休んでいた間の分のヒットも、一気に取り戻すつもりなんだろう(笑)。この調子で毎日打ってくれたら良いね」 ジョニー・デーモンはいつも通りの爽やかな笑顔と共にそう語った。
「特別な選手だよ。彼は必要以上のことをやろうとしない。誇りに思うとしか言いようがない。献身的で、一生懸命な、松井のような選手が味方でいてくれてうれしく思う。特に、彼のプレッシャーのかかる状況でのプレーの見事さは教えてできることじゃない」 ジョー・トーリ監督の絶賛する言葉も途切れることはなかった。
松井自身も、「(今夜は)ぜんぶ良かったです。内容的にも良かった」と語ったように、この日はすべてが完ぺきだった。「セカンドチャンス」の街として知られるニューヨークでも、これほど完ぺきなカムバック物語の結末は珍しい。そう、舞台こそニューヨークだが、それはほとんど「ハリウッド・エンディング」だったのだ。
このジーターの言葉の裏に、真理が見え隠れする。この日の一歩は大きな一歩には違いない。だが成功の理由の一端が、デビルレイズ投手陣の不甲斐なさにあったことも否定できない。 今後、戦うべき相手はほかにいる。レギュラーシーズンはあと20試合で終わり、プレーオフは目前だ。そこでは強豪のエース級との対戦が待っている。好敵手とのマッチアップが続く戦いの中でこそ、復帰の成否はようやく問われるのだろう。 「きょうの4安打よりも、ヤンキースにとってより大切なのは完調の松井」 ジーターの言葉は、あまりにも正しい。 「ハリウッド・エンディング」は10月に!確かに、今夜の松井のパフォーマンスは素晴らしかった。 「たくさんのファンがスタンディングオベーションで迎えてくれたので、忘れられない瞬間になった」試合後に松井はそう語った。そして、この日を決して忘れられないのは本人だけではないはずだ。
1回裏、松井がオベーションに応えて打席でヘルメットを取った瞬間、大歓声はさらに大きくなった。過去3年間の松井の実績をニューヨーカーが認め、ケガからの帰還をもろ手で迎えた。そこにいたすべての者が感動するような、それは素晴らしい雰囲気だった。 そして、こんな最高の夜を、本当に意味のあるものにするために。今後、松井にはさらにレベルの高い投手たちからも打ちまくってほしい。故障前と同じか、あるいはそれ以上の打棒でファンとチームメートを喜ばせ続けてほしい。
きょうの第一歩は序章にすぎない。 MLBの「ハリウッド・エンディング」とは、10月にワールドシリーズを制したときにだけ訪れる。その場に松井が立ったとき、復帰の物語はようやく完結するのだ。 松井秀喜 霧雨に曇るNYでヤンキースを最終所属球団として正式に引退。 大リーグレイズ松井秀喜、先制2ランメジャー鮮烈デビュー! 松井秀喜伝説!ファールでオーナーのベンツを破壊! 松井秀喜 7年目で悲願の世界一!先制弾&6打点の活躍でMVP 松井秀喜 復活劇「真っ白な気持ち」で打席に立った。。 MLB:松井秀喜 2打席連続アーチを重病の少年に贈る。