日本の“国民食”といえるカレーが高齢者のボケ防止に役立っている可能性のある。「植物ウコンの成分クルクミン」に関してシンガポール大学の研究によるもので、3日発売の英科学誌ニュー・サイエンティストで発表される。 暑さで食欲が衰えがちな夏場も、スパイシーなカレーなら食べられる人も多いはず。暑さでぼーっとしがちな頭の働きまでよくなるなら一石二鳥かもしれない。
研究チームは、60〜93歳のアルツハイマーを発症していない1010人のアジア人を対象に認識力テストを実施した。すると、半年に1回以上カレーを食べている人は、ほとんど、あるいはまったく食べない人よりも成績が良かったという。 秘密は、カレーに欠かせないスパイスであるターメリックに含まれるクルクミンとみられている。アルツハイマーの進行を抑制する役割があるらしい。今後、詳しいメカニズムを突き止める研究がされる予定。 S&B食品スパイスセンターの広報担当、浜畠啓子さんは研究結果について、「一般的にターメリックに含まれるクルクミンには、アルツハイマー予防以外にもガン抑制などの効能があるといわれている」と話す。 農林水産省が出した国内カレー粉生産総量データをもとにしたS&B食品の調べでは、日本人は1年に約80回、週に1回はカレーを食べる計算になる。シンガポール大の調査によれば半年に1回でも認識力低下が防げるのだから、日本人の認識力は相当高くてもよさそうだ。 ハウス食品が協力して年1回開催する「カレー再発見フォーラム」の事務局でも、研究に関して「スパイスによって脳内血流が上昇し、アルツハイマーや脳の機能改善に効果があるという研究は日本でも報告がある。カレーは代謝を高めるため肥満解消効果、ガン抑制、冷え防止なども確認されている」と話している。 また、今夏「2段熟カレー」などのCMに力を入れる江崎グリコ広報部の南賀哲也さんは「夏はカレーの販売促進に力を入れる季節。辛いものは夏バテ防止や食欲・消化増進の作用がありますし、汗をかいてすっきりしたいという人は多いですから」と言う。 同社のデータでは、1000世帯辺りのカレールウの食卓登場頻度は、2月のある1週間では33・14回なのに対し、6月から8月にかけて40回代に上昇するという。暑さも本番。健康のためにもアタマの働きをよくするためにも、カレーへの注目度が高まりそうだ。 【用語解説】クルクミン インドや東南アジアなどに生えるショウガ科の植物ウコンの成分。乾燥成分が、カレーに欠かせないスパイス「ターメリック」になる。カレーの黄色の色素の元でもある。悪玉コレステロールを減らし、胆汁の分泌を促し肝機能を強化する効果の報告がある。老化やガンの原因になる活性酸素を減らし、免疫力を高める効果もあるとされる。