今年にル・マン24時間レースで優勝したアウディのレースカーがディーゼル車だったのはご存じですか?ディーゼル車でレースもできる位に速くて燃費もいいんです!
欧州におけるアウディの市販車は、実に2台に1台がディーゼル。アウディのディーゼル車セールスにとって今回の優勝はかなりのインパクトを与えるのは間違いない。また既に来年のルマンで他社ディーゼルエンジンでの参戦もウワサされていることから、今回の優勝はひとつの歴史的ターニングポイントとなるはずだ。今後レースの世界でもディーゼルパワーの技術競争が一段と激しくなることでしよう。
「環境に悪い」というマイナスイメージが強いディーゼル車に復権の兆しが出てきた。技術革新のおかげで大気汚染の元となる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出量の削減が実現。本来の長所である二酸化炭素(CO2)排出量の少なさや、燃費の良さが評価されだしたからだ。欧州では環境意識の高まりを背景に広く普及しており、日本でも普及への期待が高まっている。
≪日本では「悪者」≫
日本で販売される乗用車で、ディーゼル車の割合は毎年0・1%ほどにすぎない。3〜6割がディーゼル車の欧州各国に比べて、極めて低水準だ。
その背景にあるのは、「環境に悪い」というイメージ。自動車業界では、平成11年に東京都の石原慎太郎知事がディーゼルトラックによる大気汚染の深刻さを訴えたころから、イメージが一気に悪くなったとの見方が定説となっている。
しかし、ディーゼル車の環境性能はエンジン部品の電子化で燃焼を制御し、排出ガスに化学処理を加えることなどで格段に向上。「NOxでもPMでも、技術的にはガソリン車と遜色(そんしょく)ないレベルになった」(部品メーカー幹部)という。
≪燃費で優位≫
ディーゼルエンジンには、地球温暖化の原因とされるCO2の排出量が、ガソリンエンジンに比べて少ないという特徴もある。また、燃料1リットルあたりの走行距離はガソリンより約30%も効率的。石油価格が上昇するなか「環境にも家計にも優しい車」として認知される可能性は十分だ。
そこで、各社が国内市場へのディーゼル車投入に意欲をみせ始めた。
ホンダは今年5月、平成21年までにディーゼル車を国内発売すると発表。「環境は地球レベルの問題」(福井威夫社長)との観点から国内需要増を見込んでいる。
ダイムラークライスラーは今月28日、国内で発売するメルセデス・ベンツEクラスのディーゼルエンジン搭載車をお披露目する予定だ。他社も注目しており、その結果次第では「国内での今後のディーゼル車への取り組みが変わってくる」(大手幹部)とされる。
≪価格がネック?≫
ただし、国内市場で40%超のシェアを持つトヨタ自動車は「無理に国内でディーゼル車を展開する必要はない」との立場。ディーゼル車は排出ガス処理装置などにコストがかかり、1台あたり20万〜30万円は高くなることが理由の1つとしています。
しかし、これはトヨタの建前でしょう。だってトヨタには莫大な開発費をかけて、今一生懸命に回収中のハイブリッドエンジンがあるのですから・・・トヨタの本音としては、次世代水素エンジンと言われている時期に、繋ぎのエンジンは、すでに開発済みで投資回収を進めているハイブリッド・エンジンとメリットが競合するディーゼルエンジンの開発に投資するよりは、繋ぎのハイブリッド・エンジンを推進した方が、利益があると言うことでしょう。
ユーザーにとってはどっちがいいのか?燃費はディーゼルもハイブリッドも同じ位、価格も通常のガソリン車に比べ、20万〜50万程度高いと、どちらも同じ費用と維持費になります。そんな状況で、日本のユーザーはディーゼルに悪い印象があるので、これを売るためにはかなりの広告宣伝をしないとイメージを変えることはできないと考えると、クリーンなイメージで20万〜50万程度の価格差でも許容して購入してもらえるハイブリッド車の方がスケールメリットが大きいのです。
しかし、トヨタも世界企業なので、日本以外の海外では戦略が違います。USではセレブ人気でハイブリッド車が売れているようですが、欧州ではディーゼル車もラインナップしているのです。
トヨタ以外にハイブリッドを開発したホンダ以外は、ディーゼル社の開発に向けてコスト削減には大量生産が不可欠。そのために、世界最大の自動車市場であり、しかも日本同様にディーゼル車普及が遅れている米国で人気が高まる必要がある。
業界内には「熱しやすい米国人の意識は、一気に環境問題に向かう可能性もある」との見方もあり、各社は米国世論に神経をとがらせながら、ディーゼル車戦略を練ることになりそうだ。
日本でのディーゼル復権はいつになるのか?
日本ではディーゼル=環境汚染というイメージが広く定着してしまった。決定打は石原都知事による「ディーゼル車NO」作戦だろう。これでディーゼルが完全否定され、ディーゼルエンジンのクリーン化を行う前に、メーカーは国内市場からの撤退を余儀なくされたとされていますし、私もそう思います。確かに黒くて臭い排気ガスの車に、No!と言えなかった庶民の言葉を代弁してくれた、ヒーローのイメージです。
しかし、技術が変えたクリーンなディーゼルエンジンを、石原都知事が現役のうちに、ディーゼルエンジンすげぇよ!これはいい!みんな買えよって言わせることができたら、どんなCM流すより爆発的に売れると思いますよ。