マイクロソフト社は来月、Xbox360のオンラインゲームサービス「Xbox Live」を通じ、無償キットで開発したソフトを披露、販売できる会員システム「クリエーターズ・クラブ」(年会費99ドル=約1万1400円)をスタートさせる。
個人によるゲームソフトの開発はこれまで、任天堂やソニーなどゲーム機を持つ企業の承認と高額な開発キットの購入が必要だった。ゲームソフト開発会社、「ガレージゲームズ」のジョシュ・ウィリアムズ最高経営責任者(CEO)は「ゲームソフト開発を一般に開放する初めて試み」と指摘する。
マイクロソフトのピーター・ムーア氏は「使いやすいキットで多くの人が開発を楽しめるようにと作った。高校でも使われると思う」という。すでに10の大学が、今秋始まるコースでキットの導入を決めている。
ジョージア工科大のビデオゲームインストラクター、ブレア・マッキンタイア氏は「学生が試作品を作動させるのに高性能パソコンを買う必要がなくなった」と歓迎している。
「XNA Game Studio Express」発表!遂に個人が無料でゲーム製作可能に!
2006年12月13日、マイクロソフトはWindowsベースのPC環境下でWindows用とXbox 360用のゲームをほぼ無料に近い形で制作できる開発プラットフォーム「XNA Game Studio Express」を発表した。
XNA GSEを使うためにはWindows XP(SP2適用済み)ベースのPCが必要になる。Windows Vistaへの対応は2007年内には行なわれるということだが、具体的なロードマップは示されていない。
XNA GSE自体はマイクロソフトの開発者向けサイトMSDNのXNAサイトから無料でダウンロードが可能だ。現在は英語版のみだが、順次日本語化されていく予定があり、また、インプレスジャパンの「できる」シリーズが制作予定となっている。
PS3汎用コンピュータ展開戦略へのマイクロソフト的カウンターパンチ
SCEは2005年でのPS3構想発表当時、「PS3はゲーム機を超えた汎用コンピューティングを提供するプラットフォームとして訴求する」ということを声高らかにアナウンスした。OSとしてLinuxが走り、一般ユーザーにまでプログラミング環境までを提供して、クリエイティブなプラットフォームとして育て上げていきたいという夢が語られた。
これまでは家庭用ゲーム機で動作するソフトウェア(ゲーム)開発は、ライセンス締結を結んだプロフェッショナル達にしか行なえなかった。こうしたゲーム開発を一般ユーザーにも行なえるようにするというアナウンスは実際のところ革命的だった。これが、いわゆる「PS3汎用コンピュータ展開戦略」だ。
これに対して、マイクロソフトは「ソフト屋の強み」を生かして、WindowsベースのPC環境でWindows用、Xbox 360用の両方で動作できるソフトの開発キット「XNA Game Studio Express」をほぼ無料でリリースしてきた。SCEの迷いとも取れる路線の迷走の間に、マイクロソフトはXNAを着々と育て、正式版までこぎつけるのが早かった。
開発に用いるWindowsパソコンはDirectX 9.0c世代、プログラマブルシェーダ1.1以降対応のGPUが搭載されていることを最低条件としている。ただし、Xbox 360上での動作も想定すると、プログラマブルシェーダ3.0以降対応が望ましいだろう。
プログラミング言語については「C#」が採用されている。
C#とはマイクロソフトが開発したC言語ベースのスクリプト言語のようなプログラミング言語で、コンセプトとしてはJAVAに近いものだ。C言語に慣れ親しんだ人には扱いやすく、これからC言語を学ぶ人にとっては取っつきやすいところが特長となっている。別名マイクロソフト版JAVAなどと言われることが多い。
XNA GSEを利用するためには別途、このC#開発環境を整える必要がある。しかし、幸いにもマイクロソフトはこのC#開発環境である「Visual C# 2005 Express Edition」を無料で提供しているのだ。こちらは日本語版が用意されており、MSDNのC#のサイトからダウンロードできる。
http://www.microsoft.com/japan/msdn/vstudio/express/vcsharp/
どうしてプログラムがそのままPCとXbox 360で動作できるの?
Windows PCはインテル系、Xbox 360はPowerPC系なのに、どうして双方で同じプログラムが実行できるのか不思議に思った人もいるかもしれないが、「C#ベースの開発」と聞いて「ああ、そうか」と思った人は少なくないだろう。
C#プログラミング環境は、ターゲットハードウェアを限定しない新しいプラットフォームなのが特長。作成されたプログラムは、ターゲットハードウェアでの実行時に初めてネイティブコードに変換されるので、C#プログラムはCLRが用意されれば、どのハードウェアでも走らせることができるのである。
凄く簡単に言い換えれば、今回のXNA GSEは、「XNA仕様の」、「C#動作環境が」、「PCとXbox 360に用意された」ということなのである。作成したC#プログラムはPCで動作するときはPC用のCLRを実行し、Xbox 360で動作するときはXbox 360用のCLRを実行するわけだ。
Xbox 360で自作ゲームを動作させるには?
PC上のXNA GSEで開発したゲームをXbox 360で動作させるのは実は少々敷居が高い。
開発自体はPC上で普通に行なえばよく、MSILへのコンパイルまではPC上のXNA GSE開発環境を使えばいい。問題は実行時だ。
実行にはXbox 360で動作するCLRが必要になる……ということはここまでの話の流れで想像が付くはずだ。このXbox 360版CLRは「XNA Game Launcher」という名称が付けられており、Xbox Liveマーケットプレースから「XNAクリエイターズ・クラブ」メンバーシップを購入することで入手可能になる。
「無料」だったXNA GSE環境が、ここで初めて「有料」になる
このXNAクリエイターズ・クラブのメンバーシップは1年間有効の「年間メンバーシップ」が9,800円、4カ月間有効の「4カ月のお試し版」が4,800円となる。これはゲームを配布するメンバー登録の意味合いが強く、誰でも・なんでもとなるとわいせつ表現とか残虐表現とか、そのゲームのテーマに問題があるゲームを製作して配布されては困るための意味もあるのだろう。
PCからのプログラムやデータ転送にはネットワークを用いる。Xbox 360はこのデータの受け取りやソフトウェアの実行時には必ずXbox Liveへの接続が必要になる点にも留意したい。Xbox Liveへの接続が必要になるのは、メンバーシップライセンスの確認が必要になるためだ。
しかし、現時点では、作成したゲームを一般のXbox 360ユーザーに配布する手段がないということだ。Xbox Liveのマーケットプレースを通して配信することはできず、現時点ではフレンド間でのやりとりにも対応していない。
XNA GSEの可能性〜Xbox 360で動作するノンゲームソフトウェアやZUNEへの対応も