「勝つか負けるかはそれほど重要ではない」 「負けた方が次の試合の修正点を見つけやすいという点もある。“敗北は最良の教師”です」 前提として「勝つのがスポーツの目的」とも語ったが、いつもの薄笑いが不気味さを放つ。負けから学べ−。10年南アフリカW杯出場&上位進出への長期スパンを考えた上での選手に対するメッセージだ。
「勝つと見えないものがある」。たとえばゴール連発で大勝すれば、守備に小さなミスがあっても目立たず反省の思いも弱くなる。内容が伴わない1勝より、敗戦で課題が明確になる方がいい。今はまだ勝つことだけが目的ではない。そのためか、スタメンは未公表。報道陣はおろか、選手にも伝えなかった。 「相手がどういう作戦で来るかによる。先に発表するのは相手に失礼。相手が“日本は何をやってくるのか分からない”と考えるように…。どんな相手でも対応できるインテリジェンス(知性)を作りたい」 「負けたことから最も教訓を得ている国は日本だと世界は見ている。経済や社会の復興についての話です」。日本は敗戦から立ち直り高度経済成長を遂げた。オシム監督はドイツW杯に敗れたサッカーにこれを重ねた。 「サッカーも学ぶべきことはある。日本はそうして先進国の仲間入りをした。他のサッカー先進国と肩を並べることが私の願いです」。オシム監督が筆を執るジャパン復興物語は、9日の国立競技場でいよいよ序章が綴られる。 オシムジャパン初戦は、トリニダード・トバゴ オシム監督 俊輔に“戦力外通告” “ファンタジスタ”はいらない-。サッカー日本代表のイビチャ・オシム監督(65)が現地2日、サウジアラビア戦(ジッダ)に向けて会見し、スコットランド・セルティックのMF中村俊輔(29)に事実上の戦力外通告を突きつけた。オシム監督は運動量の少ない古典的な司令塔タイプを重用しない方針を表明。年内は海外視察を回避し、国内組をベースにチームを作る意向も明らかになり、MF中村俊は厳しい立場に追い込まれた。 語録に残酷なまでの方針を詰め込んだ。ファンタジスタ受難の時代、オシム監督も自身が冷徹なリアリストであることを強調した。個人名こそ出さなかったが、MF中村俊に突きつけられた“戦力外通告”だった。 「もっとアグレッシブで、走る能力の高い選手が必要。世界のサッカーはそういう方向に進化している。『美のために死んでもいい』という人が存在する要素はますます少なくなる。個人的には非常に残念。でも人生もそう。昔の旅行は汽車に乗ったり歩いたりしていたが、今はみんな飛行機だ」。華やかなテクニシャンより、馬車馬のように走り回れる実用性のある選手が重要だった。 関係者が「パーツの一部になれないスタイルは難しい」と明かすように、オシム監督は1人の選手に依存したチーム作りを嫌う。中村俊が体調を崩し、ジーコ監督のプランが揺らいだドイツW杯の反省もあった。選手の状態を把握できない海外組を中心に据えるのは危険と考え、国内組にベースを置いた。年内はJリーグをすべて視察する予定で、天皇杯まで足を延ばす構想もある。関係者は「海外組には興味を示してない」と語った。 この日の会見でも「複数ポジションができる選手を使わずに負け続けるなら進歩ではなく後退する」とユーティリティー性を高く評価。純粋な司令塔である中村俊は厳しい立場になった。ドイツW杯のエースが再び日の丸を背負う日は来るのか。