この「ロングテール」と言う言葉を初めて提唱したのが、Wired Magazine誌の編集長Chris Anderson氏とされています。2004年10月のWired Magazine誌に「The Long Tail」と題する記事を掲載したことにより「ロングテール理論」はあっという間に広く認知されるようになりました。
当初は、この「ロングテール理論」を、「死筋商品」とか「メジャーではない」、「トカゲの尻尾」などと悪い方向に物事を捉えるような表現で捉える人が多かったと記憶していますが、Chris Anderson氏の考えや表現は、リアルでは「死筋」であってもネットでは「ヒット商品ではなく、その他の」の分類に属したものでも、その価値を生かすことができる分野を指しているのです。
こうして「ロングテール」を考えると、物の価値や情報の価値は、テレビCMを莫大な費用を投下して強引にメジャーにする価値観とは違い、ネットを活用することで、その一定の価値を認める人がリーチする術をネットがもたらした功績と捉えることができるでしょう。
私が運営するサイトも、「ロングテール」のサイトです。
コンテンツやキーワードの数が多くなり、アクセスを最も稼ぐトップキーワードは、サイト全体の10%以下しかありません。残りの90%のページは、数ページビューしかない情報としては「死筋」、「トカゲの尻尾」程度のアクセス数ですが、サイト全体から見れば90%を稼ぎだす訳で、この「ロングテール」部分がとても重要な価値(アクセス数、ページビュー)を持ってきています。
「パレートの法則」(80:20の法則=20%の商品が売上げの80%を支配する)なのか?
Chris Anderson氏は、「ロングテール理論」を「98%ルール」と表現をしていますが、同様の著書などでは「80対20の法則」など表現も見受けられますが、これは情報が少ない場合に起因するデータのズレだと思われますが、私のサイトでは、「ロングテール」は、90%程度なので、98%理論の近づくためにはまだまだキーワードなど情報の収集が不足していると考えられます。
このような「ロングテール理論」を最初から理解し、そして実践してきた会社が、Amazonが有名です。
AmazonのJeff Bezos氏の著書で有名な言葉は、Amazonと言う社名に表されています。
Jeff Bezos: Business Genius of Amazon.Com
1)Amazon社名
南米の大河の名に由来する。実際のアマゾンは、網の目のように細かい支流を集めて流域面積世界一になっている。そんな想いも込めているようだ。
2)ネットの強み
オンライン書店の強みは、ベストセラーをカバーして大量に売りさばくだけでなく、店頭書店では見つからないような小部数の本を膨大な種類売ることで、「ちりも積もれば山となる」式に大きな売上げを達成するところにある。
3)命名の細部
社名をアルファベット順に並べたときに上にくるという点にも気を使ったようです。細部にまでこだわった。また、アマゾンのロゴで、「a」から「Z」へと矢印が結ばれているのも、全てを漏らさず提供するという自負の現われだといいます。
消費者から好みの音楽や映画といった情報を収集し、その情報を活用して消費者に関連アイテムを勧めるといったことが可能になる、というのが彼の主張でした。こうして消費者はヒット商品からどんどん離れ、いわゆる「ロングテール」の領域に入っていく。
Amazonでは、売上げの多い商品から少ない商品へと、売上げ数の棒グラフを順番に並べていくと、下部の部分は、恐竜の長いしっぽ(ロングテール)のように見える。ネットビジネスでは、「ちりも積もれば山となる」で、この部分の売上げに占める割合がリアル店舗よりも大きくなるといわれています。
ここでポイントとなるのが、スパイクと呼ばれる現象でしょう。
アマゾンでは、四半期に最も売れた本は、一昨年に発売された本で、通常ならば売れ行きの悪い本は半年で店頭から消えるのです。そうすると、二度と大きく売れることはないのですが、ここでは前期までの順位は2千位前後だったが本が、著者がテレビに出演すると売上げが跳ね上がり、四半期でもっとも売れた本ベストセラーとなったのです。
こうしてデータをみるとテレビの力は確かに大きく、それを認識するのですが、決してCMと同じく強制されたものではないと言うところがポイントでしょう。テレビの視聴者=ネット利用者であり、それぞれが番組を見てより多くの情報を得ようと能動的にアクションした結果、スパイクと言われるように本の購入に繋がったのです。
これは、世間一般で言うリアル書店の卸販売ベストセラーとは全く違い、個人ユーザーがネット購入したリアル・ベストセラーなのです。こう考えるとオリコンも捏造疑惑のランキング企業なんでしょうか?オリコンNo1って言われてもデータの出処が不明ですからね・・・
このような現象は、すでに身の回りでも確認されていて、楽天や価格.comなど膨大な情報を集約することで、その情報の中から価値を見出すものを探し出し、そして販売するチャンスを得るのです。ネットの消費者から見れば、楽天や価格.comはには利点があり、おススメ商品しか展示できないリアル店舗とは比べものにならないくらい豊富商品から選ぶことができるのです。
こうして考えると、「ロングテール」はネットがもたらした個人への回帰なのかもしれません。
テレビが全盛(今でも全盛と思っている一部業界の方々もまだいますが・・・)の時代には、CMを流すことで広告業界でも過去のデータから予測できる程度の商品が販売可能でしたが、これは旬ワードと言われる程度のパワーしかなく、万人の趣向や価値観をCMと言うブルドーザーが平たく押し並べているだけで、ど根性大根のように、個人はそれぞれの価値観でほしい商品を選ぶ・選べる時代なのです。
そしてすでに始まっていることではありますが、ブログ(CGMとか言われるコンシューマージェネレーテットメディア)の時代では、先に表したAmazonや楽天、価格.bomですら過去の巨大メディアと同等の価値しか持つことができない時代になり、個人のブログ+
アフェリエイトで代替え、いえそれ以上の個人の価値観で対個人に対して情報を発信できるのです。
こうなると、Amazonや楽天、Yahooですら生き残る術は、
アフェリエイトを提供(収益の分配)会社として、いかに個人(ブログ)と連携できるかが重要なポイントになりそうです。ブログを無視し自社の収益独占だけを考える企業は今後衰退するのかもしれません。
CNET:「ロングテール理論」の提唱者クリス・アンダーソン氏に聞く
http://japan.cnet.com/interview/media/story/0,2000055959,20182227,00.htm
Long Tailは大風呂敷(Long Tale)?
“ロングテール”とはご存じの通り、2004年10月にワイヤード編集長クリス・アンダーソン氏が同誌に発表した記事から生まれた言葉だ。発表直後から反響がすさまじく、右も左もロングテールなこの世の状況に「同誌始まって以来の発明語」と騒がれた。
売れない日陰の商品(tail=尻尾)も、在庫底なしのネットでなら買い手に巡り会える。日陰が束になってかかれば日なたのヒット群(head=頭)をボリュームで凌駕する時代がくる−−骨子は、CNET米国版7月17日掲載の著者インタビューにやっと邦訳が出たので参照されたい。本ウェブサイトでも御立尚資氏が先月「ロングテール礼賛を超えて」と題し「尻尾より背中」と面白いことを書いておられる。
しかしながら、ゴームズ氏の記事は「礼賛を超えて」などという穏やかなものではない。「『尻尾が頭を追い抜く』というのは、話としては素晴らしい。だが世界中、どこを探してもそんな事実はない。ロングテールは誇大広告であり実態とかけ離れている」とバッサリ切り捨てたのだ。
「98%の法則」は2年古い
『The Long Tail』の序章でアンダーソン氏は、2年前に音楽配信企業Ecastに取材した際、「カタログ収録曲の98%は四半期に1度は再生されている」と聞き「パラダイムの転換」を来すほどの強い衝撃を受け、これを「98%の法則」と呼んだ。それが本著執筆のキッカケと述べている。
この冒頭の下りに関しゴームズ氏は「2年前より在庫がだいぶ増えた今のEcastに取材してみたが、四半期に1度も再生されない曲の割合が2%から12%に増えていた」と指摘。収録110万曲の音楽配信業者、ラプソディーではもっとえらいことになっていた。
「アダルトレンタル店の法則」は、最強のビジネス理論か?
しかし思い起こしてみると、このような理論の多くが既に身の回りで沢山確認されていたことに気が付きます。これはレンタルVideo理論とでも言えばいのか、アダルト理論でしょうか!レンタルビデオ屋の商売は、仕入80%が映画、アニメ、ドキュメントなど一般作品で、残りの20%程度がアダルトとされています。しかし収益の80%を稼ぐのはアダルト作品で、一般の映画などは20%以下でしかありません。
映画は人気作品であれば大量に在庫しなければお客さんの不満になり店舗も利用されなくなってしまいますが、かといって人気作品がいつまでも借りてもらえる訳ではなく、回転率から言えば数回〜数十回程度でしょう。
しかしアダルト(AV)は、人気AV女優でなくても回転率は映画の3倍と言われています。もちろん同一作品の大量在庫など必要ありません。借りたい欲求が強いため、借りられるまで何度も来店するので、その度に別の作品も借りてくれるので、欲望の渇きを誘う程度の在庫で十分なのです。それが収益にもつながります。
このような事例は、多くあると思いますが、もっとも効果が印象に残るビジネスとしては、レンタルビデオが一番ではないでしょうか?