ロボット制御技術などを手がけるベンチャー、ユニバーサルロボット(東京都江東区)は、携帯電話のカメラで手首を撮影するだけで、静脈認証による本人確認ができるソフトウエアを開発した。専用装置を使わず静脈認証できる技術は世界初。携帯電話事業者やメーカーなどと組み、年内にもこのソフトを組み込んだ製品の開発を目指す。
静脈認証技術は銀行のATM(現金自動預払機)や入退室管理システムなどで利用が広がっているほか、装置単体でも販売されている。しかし、いずれも多人数の認証をするシステムのうえ、腕を固定したりする必要があるため、大型の専用装置となっており、携帯電話端末向けのシステムはない。 今回開発したソフトは、従来と比べ認証精度は落とさずに、端末の持ち主1人だけを認証することでプログラムを簡素化。腕を固定せずに撮影しても認証できる3次元画像補正技術を新開発するなどして実用化した。 有効画素数30万画素以上のカメラを搭載する携帯電話であれば、ソフトを組み込むだけで利用できる。ただ、現行の携帯電話ではレンズに改良が必要なため、そのまま導入することは困難。当初は新たに発売される機種への導入となる見通しだが、今後ソフトの改良により、現行機種を含めた、どの携帯電話でも利用可能にしたい考えだ。 携帯電話は電子マネーやクレジット機能を搭載した端末が急速に普及。パソコン並みの機能を持つ「スマートフォン」と呼ばれるビジネス向けの携帯電話も増えている。こうした端末を他人に見られたり、使われたりすれば、持ち主が重大な損害を被る懸念が高まっている。 すでに指紋や顔による認証機能を搭載し、電子マネーなど一定の機能をロックする携帯電話は商品化されているが、指紋認証には拒否感を持つ人もいるほか、顔認証は精度が低いなどの課題があった。静脈認証であれば精度も高く、指紋のような拒否感も薄いとみられる。 また、従来はパスワードとの組み合わせによる認証が多かったが、新開発したソフトは簡単に搭載可能なため、指紋や顔認証と組み合わせて提供することも可能。実現すればパスワードを覚える煩わしさがなく、端末のセキュリティーを向上させることが可能となる。 同社は、新ソフトを携帯電話だけでなく、パソコンやPDA(携帯情報端末)、簡易な入退室管理システムにも応用したいとしており、今後、関連企業に採用を提案していく。