フィールドで戦うサッカー日本代表は、サッカー選手だけではなく、サッカーの審判もフィールドで戦っているのです。今回のワールドカップ決勝トーナメントで、ドイツとポルトガル戦で日本人初の主審を務める上川徹氏(43)が決勝トーナメントの笛を吹く。 国際サッカー連盟(FIFA)は6日、3位決定戦と決勝戦の担当審判を発表。上川氏は広嶋禎数(44)韓国の金大英(43)両副審とともに地元ドイツとポルトガルが対戦する3位決定戦(8日・シュツットガルト)の担当に指名された。
FIFA審判委員会での高評価が、上川氏の抜てきにつながった。1次リーグで2試合を担当。無難な笛で決勝トーナメントに残ると、準々決勝(イタリア−ウクライナ)準決勝(イタリア−ドイツ)では広嶋氏とともに第4、第5の審判員を務めた。これらの試合での的確な仕事ぶりが評価され、日本人初の決勝トーナメントを任された。 02年に続いて2大会連続で審判を務める上川氏は、大会前から「目標は決勝戦の笛」と話していた。「大会についていくだけで精いっぱいだった」02年大会は1試合担当しただけ。しかし、今回は「参加するだけではダメ」と1試合ごとに経験を積み、決勝戦の1つ前の3位決定戦を担当する。 試合は、ドイツとポルトガルが対戦する。ドイツは地元の声援があり、ポルトガルは40年ぶりの3位がかかる。激しい戦いになることは必至だ。さらに、試合自体の重要性もある。大会ごとに「廃止論」が出てくる3位決定戦だが、FIFAは「今後も続ける」と表明したばかり。仮に試合が円滑に行われなければ、再び廃止論が噴出してくる可能性は高い。FIFAにとっては大切な試合だ。 日本代表は1次リーグで敗退したが、日本人審判員は欧州や南米の強豪にまじって活躍した。同じ3位決定戦でマッチコミッショナーを務める小倉純二FIFA理事は「日本のサッカー界にとって大きい」と、上川氏を絶賛。「運営に携わる日本人の活躍なども含めて、日本の総合力が高まってきた」と、喜んだ。 すでに3日には「2試合で笛を吹けて、出来には満足している」と話していた上川氏だが、もう1試合、重要な仕事が回ってきた。「日本でやってきたことには自信があるし、誇りもある」と話していた同氏が、3位決定戦で日本の「サッカー力」を見せる。
3位決定戦実施に賛否両論 熱戦か凡戦は選手次第 W杯も残り2試合となった。誰もが注目する決勝前日に、ドイツ−ポルトガルの3位決定戦が行われる。既に、優勝の望みが消えた選手は意欲の維持が困難で、3位決定戦の廃止論も絶えない。しかし、国際サッカー連盟(FIFA)のジーグラー広報部長は「高い価値がある。選手にとって3位なのか、4位なのかは重要だ」と強く続行を訴える。 3位決定戦は1934年の第2回大会からスタート。その後は、50年の第4回大会を除いて毎大会実施されてきた。最近では、98年大会で初出場のクロアチアが2−1でオランダに勝利。当時のブラジェビッチ監督は「数年前まで戦争に傷ついた小国が、その存在を世界に示すことができた」と誇らしげだった。 前回大会は躍進したトルコと地元韓国が3−2の熱戦を繰り広げた。トルコの司令塔バストゥルクは「国民全体に誇れる3位だ」と胸を張った。こうした経緯はFIFAの存続姿勢を後押しするが、韓国でのテレビ視聴率は準決勝よりも下がるなど、一般的に世間の関心は薄れているのが現状のようだ。 今大会も開催国が3位決定戦に出場する。過去開催国の3位は、62年大会のチリと90年大会のイタリア。地元の声援はドイツ選手の気力をかき立てるはずだ。また、過去3位チームからは最多9人の得点王が生まれており、今大会5ゴールでトップを走るドイツのクローゼが10人目となるのかや、GKカーンが出場するかも注目される。 一方のポルトガルは、フィーゴ主将が欠場するとのうわさが出るなど、40年ぶりの3位という目標をどうとらえているのかが不明だ。今回の3位決定戦は、熱戦それとも凡戦−。
上川主審残ったイタリア戦で第4、5審判 上川徹主審(43)が、かろうじて生き残った。FIFAが28日に準々決勝以降を担当する審判12組を発表。上川主審、広嶋副審、韓国の金龍大副審の日韓セットも選出された。準々決勝のイタリア−ウクライナ戦の第4、5審判を務めることになった。 1次リーグのクロアチア−オーストラリア戦で同じ選手に警告を3度も出した英国のポール主審、決勝トーナメント1回戦ポルトガル−オランダ戦で4人を退場させたロシアのイワノフ主審は「帰国リスト」入り。ポール主審は、国際舞台からの引退を表明した。準決勝以降の配置は未定で、上川主審が決勝トーナメントで日本人初の笛を吹く可能性は残された。
1次リーグのクロアチア−オーストラリア戦で同じ選手に警告を3度も出した英国のポール主審、決勝トーナメント1回戦ポルトガル−オランダ戦で4人を退場させたロシアのイワノフ主審は「帰国リスト」入り。ポール主審は、国際舞台からの引退を表明した。準決勝以降の配置は未定で、上川主審が決勝トーナメントで日本人初の笛を吹く可能性は残された。
「日本は一番戦っていなかった」上川主審らが辛口評価 2試合で笛を吹いた上川徹主審(43)と広嶋禎数副審(44)。世界レベルの戦いを直接目にする2人は、日本代表について「(出場チームで)一番、戦っていなかった」と辛口に評価した。 上川主審は「強いチームは汗をかいている」ときっぱり。日本は、地道にボールを追い掛ける泥臭い部分が欠けていると、映った。広嶋副審は「相手ボールにプレスをかけることをさぼったら、幾ら技術のある選手がいても勝てない」と指摘した。 技術面では、ボールを奪い取ろうとする場面で、体格で劣る日本はどうしても反則が多くなる。上川主審は「Jリーグの試合でしっかり、反則を指摘していきたい」と改めて強く思ったといい、「そうすることで、選手には反則なしでボールを奪う技術をさらに磨いて欲しい」と話した。
上川主審は「強いチームは汗をかいている」ときっぱり。日本は、地道にボールを追い掛ける泥臭い部分が欠けていると、映った。広嶋副審は「相手ボールにプレスをかけることをさぼったら、幾ら技術のある選手がいても勝てない」と指摘した。
技術面では、ボールを奪い取ろうとする場面で、体格で劣る日本はどうしても反則が多くなる。上川主審は「Jリーグの試合でしっかり、反則を指摘していきたい」と改めて強く思ったといい、「そうすることで、選手には反則なしでボールを奪う技術をさらに磨いて欲しい」と話した。
日本人審判のレベル示す好機 上川主審 日本の上川主審と広嶋副審に朗報が届いた。「本当に決勝トーナメントで笛を吹きたかった。ほかの試合を見て、もっとこうすれば、と思うこともあるので」と話していた上川主審の願いは、大会の大詰めに来てかなうことになった。 1次リーグ2試合の内容は満足のいくものだったと話す。自信を持って次の割り当てを待っていたが、回ってくるのは第4、第5審判ばかり。上川主審は「わくわくしながら待っている。いつでも準備してはいる」と話していたが、もう出番はないとの覚悟もあったはずだ。 広嶋副審は「どこを見ているかも分かっているし、通じあえる」と、上川主審との抜群のチームワークに自負を持つ。オフサイドの判定にも勇気を持って臨めているという。日本人審判のレベルを世界に示す絶好の機会が巡ってきた。
1次リーグ2試合の内容は満足のいくものだったと話す。自信を持って次の割り当てを待っていたが、回ってくるのは第4、第5審判ばかり。上川主審は「わくわくしながら待っている。いつでも準備してはいる」と話していたが、もう出番はないとの覚悟もあったはずだ。
広嶋副審は「どこを見ているかも分かっているし、通じあえる」と、上川主審との抜群のチームワークに自負を持つ。オフサイドの判定にも勇気を持って臨めているという。日本人審判のレベルを世界に示す絶好の機会が巡ってきた。
上川氏が的確ジャッジ−誇らしげな笑顔 後半、ドイツ3点目のゴールを決め喜びのあまりユニホームを脱いだシュバンシュタイガーにイエローカードを出す上川主審も思わず笑顔 サッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会は8日(日本時間9日)、シュツットガルトで開催国ドイツとポルトガルによる3位決定戦が行われ、上川徹主審(43)が日本人審判員として初めて決勝トーナメント以降の試合で笛を吹いた。 今大会では広嶋禎数(44)、金大英(韓国)の両副審とトリオを組み、1次リーグで2試合を担当した。上川主審は、この日も冷静かつ的確な判定で大一番をコントロールした。 黄の蛍光色のシャツを着た上川主審は前半7分、ドイツのフリンクスに両チームで初の警告(イエローカード)を出し、これで選手のプレーが一気に締まった。観客にも分かりやすい大きな身ぶり、選手には対話を心掛けて高揚している気持ちを静めさせた。 イエローカードは計5枚出したが、「いつもの試合と同じようにやること」と話していた通り、スムーズな試合の流れをつくり“陰の演出者”となった。 2002年大会では1試合しか笛を吹く機会のなかった上川主審だが、今大会は日本人主審として初めて1大会で3試合を裁いた。「前回の経験もあり、判定が選手に理解してもらえているのが分かる」と大会の進行に合わせ、自らのジャッジにも自信を深めていったようだ。 「決勝の笛を吹きたい」という夢こそかなわなかったが、W杯では審判員に45歳定年制が敷かれており、最後の機会を生かした。試合後の表彰式では、3位になったドイツに先立ち、審判団が記念のメダルを授与された。上川主審の誇らしそうな笑顔が印象的だった。
今大会では広嶋禎数(44)、金大英(韓国)の両副審とトリオを組み、1次リーグで2試合を担当した。上川主審は、この日も冷静かつ的確な判定で大一番をコントロールした。
黄の蛍光色のシャツを着た上川主審は前半7分、ドイツのフリンクスに両チームで初の警告(イエローカード)を出し、これで選手のプレーが一気に締まった。観客にも分かりやすい大きな身ぶり、選手には対話を心掛けて高揚している気持ちを静めさせた。
イエローカードは計5枚出したが、「いつもの試合と同じようにやること」と話していた通り、スムーズな試合の流れをつくり“陰の演出者”となった。 2002年大会では1試合しか笛を吹く機会のなかった上川主審だが、今大会は日本人主審として初めて1大会で3試合を裁いた。「前回の経験もあり、判定が選手に理解してもらえているのが分かる」と大会の進行に合わせ、自らのジャッジにも自信を深めていったようだ。
「決勝の笛を吹きたい」という夢こそかなわなかったが、W杯では審判員に45歳定年制が敷かれており、最後の機会を生かした。試合後の表彰式では、3位になったドイツに先立ち、審判団が記念のメダルを授与された。上川主審の誇らしそうな笑顔が印象的だった。
ポルトガル・スコラリ監督、上川主審を褒める Jリーグの磐田を率いた経験を持ち、前回大会ではブラジルを優勝に導いたポルトガルのスコラリ監督も、上川主審のジャッジを褒めた。 「素晴らしいゲームにした。日本人審判も高い質を持っていることを証明したのではないか」と話した。
Jリーグの磐田を率いた経験を持ち、前回大会ではブラジルを優勝に導いたポルトガルのスコラリ監督も、上川主審のジャッジを褒めた。
「素晴らしいゲームにした。日本人審判も高い質を持っていることを証明したのではないか」と話した。