ブラムは発酵酒、アラックは蒸留酒ヤシの花の樹液を発酵させて作った酒が「トゥアック」。ほのかな甘さと、酸っぱさがある。気の抜けたビールっぽい後味が残るが、とにかくアルコール度数が低く、なかなか酔うまではいかないのが現実。
ヤシの花に近い部分で枝を切り落とし、切り口から始めは水分が出てきますが、それは捨て、そのあとに、乳液のようなものが滴り落ちてきます。それがトゥアックと呼ばれ、飲まれるものです。ヤシの切り口の先に竹筒をぶら下げてトゥアックを貯めます。1番はじめに採ったトゥアックは甘くて美味しい。そして、非常に強いそうです。 トゥアックは、1日に2〜3回、竹筒からトゥアックを取り出すことができ、切り口が固くなりトゥアックが出なくなると、切り口を薄く切り取ります。すると再びトゥアックが出始めます。これを3ヶ月ほど繰り返すうちに枝は短くなり、切り口が幹に近づき切り取ることが不可能になります。そうなると、この枝からトゥアックを採るのは終わりです。 ヤシの樹液を蒸留して作るのが「アラック」。コチラは味こそ甘いものの、アルコール度数はかなり高く、火をつければ燃えるという。このヤシの樹液がサトウヤシの場合、酒の名称は「アレン」となる。 醸造する、しないに係わらず、どちらの酒もヤシの自生する地域(イスラム圏おも含む)には、名前こそ違っていても、必ずこれらの酒が存在しているが、味やアルコール度はどこの国で作られたものであってもそれほど変わらない。一方、米系の酒もどの生産地でも作られてはいるが、味、色、アルコール度数等々が産地ごとに違うというのが、ヤシ系の酒と最も異なる点だ。 こうした米系・ヤシ系の、いわゆる地酒は、正規のルートではあまり輸出されることはない。しかし、バリでほんのわずか生産されている“幻”とされている酒、「アラッ・オブ・バリ」と、「アラッ・ベラス」。「アラッ・オブ・バリ」はヤシの花の花芯から採れる樹液と米から醸造した原酒を幾度も蒸留し、寝かせたスピリッツ。 アルコール度も29度と高く、甘い香りはカクテルのベースに使いやすい。一方の「アラッ・オブ・バリ」は、前出の「アレン」と「ブラム」のカクテルを醸造した感じのお酒。正確にはココナツシュガーとバリ米・赤米を原材料とする単式蒸留酒だ。赤米を使っているため、ほのかな赤みとフルーティな香りがあり、ロックで飲んでも味わい深い。