2016年夏季オリンピックの開催都市に立候補している東京都は6月26日、競技会場予定地を発表した。全29競技で36会場。そのうち29会場が都心の半径10km圏内に収まっている。 「再び、オリンピックを東京で。」 石原都知事の熱い思いを受けて集合した懇談会委員10名が2016年の開催を目指すオリンピックの基本的な考えをここにまとめた。
その懇談会では、昭和39年10月10日、東京・神宮の杜の上空には、抜けるような青空が広がっていた。あのとき、多くの日本人が体の芯がしびれるような感動を覚えたのは紛れもない事実である。 しかし、40年後の現在、東京のみならず日本全体を覆っているのは、残念ながら閉塞感という名の曇天である。経済が多少上向いてきたとはいえ、日本は、目標を見失ったまま漂流を続ける不甲斐なさを、未だに拭い切れないでいる。 2016年は決して遠い未来ではない。わずか10年後の現実である。そこに照準を定め、都民・国民共通の新しい目標を目指して歩み始めることが、東京そして日本の存在を世界に披瀝する絶好の機会を創り出すと確信している。
なぜ、東京でオリンピックを開催するのか 国民共通の大きな目標を失った日本人は、卓越した技術力や感性を持ちながら、自らのポテンシャルを過小に評価し、ことさらに萎縮してしまっている。こうした状況を打破するためにも、今こそオリンピックを契機に、日本再浮上に向けた第一歩を踏み出すときである。 オリンピックは、スポーツを通じて世界の平和に貢献する、世界最大のスポーツ・文化の祭典である。オリンピック開催は、次の世代に夢を与え、国民の間に一体感と高揚感を醸し出す。日本の高い技術力や日本人のフェアプレイの精神、無類のホスピタリティなどを組み合わせることで、オリンピックの新しいモデルを、さらには大都市の新しいあり方を提示することができる。オリンピックはまさに、成熟都市東京が国際的な責任を果たし、世界に貢献する「志の高い国」=日本の存在を示す絶好の機会である。 21世紀の今日、我々は、都市の盛衰が国家の命運を大きく左右する時代に生きている。都市の力こそ、まさに国力である。この国において、国家を牽引し日本の存在を象徴する都市は、東京である。 こうした観点に立ち、オリンピック開催を契機として、東京の再生、ひいては日本再生を成し遂げる必要がある。
オリンピックで変わる東京の姿 オリンピックは都市の姿を一変させる大きな力を持っている。 オリンピック招致を契機に、東京の持つ可能性を存分に開花させ、東京を21世紀に相応しい近未来的な都市につくり上げていく。 オリンピックは、決して一過性のイベントではなく、大会前=プレ、大会後=ポストの長期的スパンで取り組むべきものである。
2016年X月X日 近代オリンピックから100年、20世紀の東京オリンピックから50年。 東京には、あの日と同じ日本晴れが広がっているであろう。
東京オリンピックというゴールまで、バトンを繋いでいくのは、我々一人ひとりである。
平成18年2月 東京オリンピック基本構想懇談会一同