忘れ物を早くお客さんの元へ――。JR東日本は来年度中にも、ICタグを使って車内の忘れ物を所有者の手元に届けるサービスを始める。 荷物にICタグを取り付けて連絡先を事前登録、発見されれば所有者に素早く連絡が行く仕組みだ。個人情報流出を恐れて所持品に名前や住所などを記しづらい時代を反映したシステムでもある。
忘れ物を早く持ち主へ ICタグサービスは、ジェイアール東日本コンサルタンツとエヌ・ティ・ティ・コムウェアが共同で開発した。利用者は、駅売店で荷物に取り付ける名刺サイズのICタグを購入し、拾得された際の連絡先を事前登録しておく。駅などに拾得物として届けられた際、タグのIDを読み取ることで、持ち主や連絡先が特定される仕組みだ。 タグは1個数百円程度になる見込みで、一度購入すれば何度でも、また別の荷物でも再利用が可能だ。 これまでは、利用者から忘れ物の特徴などを聞き、関係する路線や駅などに連絡。発見されれば関係機関に所有者の住所や名前などの連絡先を通知していた。こうしたシステムでは、個人情報に接する関係者が多く、流出の懸念があった。 また、最近では個人情報として悪用されることを恐れ、荷物などに連絡先を明記しない利用者が多くなっている。タグの利用は、こうした形での個人情報の流出を防ぐことも狙いだ。 JR東日本によると、同社管内での忘れ物は年間153万件あるが、持ち主に戻るのは3割程度。同社は「新システムで所有者への返却率は飛躍的に高まる」と期待する。