イスラエルの遺跡から10万年前のヒトが身につけた最古の装飾品と考えられる貝殻が見つかっていたと、英仏などの共同研究チームが23日発行のサイエンス誌に発表する。ヒトが文化を創造する能力を示し始めた例としては、従来の記録を2万5000年さかのぼる。
ムシロガイという1.5センチほどの海の巻き貝で、いずれも小穴が開けられていた。1930〜40年代に、イスラエルのスフール遺跡で2つ、アルジェリアのオウエド・デジェバナ遺跡で1つが見つかっていた。これまで博物館でしまい込まれていたのを、ロンドン大ユニバーシティカレッジのマリアン・バンヘーレン博士らが確認した。 同じような貝殻が、04年に南アフリカ・ブロンボス洞窟(どうくつ)遺跡(7万5000年前)で、19個まとめて見つかり、貝殻に開けられた穴などから装飾用ビーズと考えられた。われわれホモ・サピエンスが美などの文化に目覚め、現代人的な行動が取れるようになる兆しと考えられている。 今回の貝殻が見つかったスフール遺跡では、約10万年前の初期ホモ・サピエンスとみられる化石人骨が10体分発掘され、オウエド・デジェバナ遺跡でも石器などから少なくとも3万5000年前に初期ホモ・サピエンスが住んでいたと考えられている。バンヘーレン博士らは、遺跡の環境や貝殻の特徴などから、ブロンボス遺跡と同様に、ヒトが貝殻を持ち込んで穴を開け、装飾用ビーズとして使ったと結論づけた。