だれもが10年前の奇跡の再現を夢に見た。右へ、左へ、世界最強のブラジルのシュートの雨を、鬼神のごとく跳ね返していく。その姿はあの日と同じ。日本代表のゴールマウスに仁王立ちするGK川口を中心とした守備陣は、一度は日本に希望の灯をともした。
2点差勝利が最低条件。先制点は絶対に与えられない状況で、川口の集中力は極限に達していた。まず前半7分、FWロナウドのシュートを左手1本ではじいて波に乗った。同16分のFWロビーニョ、その4分後のロナウド、さらに22分のMFジュニーニョペルナンブカノのミドルシュートと、立て続けに襲いかかる鋭い一撃をことごとく防いでみせた。
「勝つ空気を(仲間の)後ろから伝えたい。自分の力のすべてを出したい」。そう話していた通り、流れを引き寄せた。前半34分に、FW玉田が待望の先制弾。96年アトランタ五輪、ブラジル代表の猛攻をしのぎきって1-0で勝った“マイアミの奇跡”が、サポーターの心によぎった。
スルナが直接FKを決めてクロアチア1-0でリード
【前半34分】
日本ゴール!!!中盤の稲本が左サイドへロングパスを通すと、三都主がフェイントをかけて中央に切り込み、ペナルティーエリアへスルーパス。
最終ライン裏にうまく走り込んだ玉田が左足のシュート! ゴール左上に突き刺さる。
日本、
ブラジル相手に先制!
奇跡への序章かに思えた。ブラジルの強固なゴールマウスをこじあけたのは、今大会初のスタメンとなったFW玉田の左足だった。前半34分、左サイドでボールを受けたDF三都主が前のDFを交わし、DF裏へスルーパス。右サイドから、オフサイドラインぎりぎりを流れてきた玉田が抜け出し、角度のないところから、左足を振りぬいた。ニアサイドのゴール左上。ここしかないというところに、強烈な弾道を突き刺した。
オーストラリアがPKで同点に追いつく。
クロアチア 1-1 オーストラリア
前半46分 ブラジル ゴール!!!
ペナルティーエリア手前でボールを回し
日本を揺さぶると、ロナウジーニョがペナルティーエリア右へパス。シシーニョがヘッドで中央に折り返すと、ロナウドがヘディングシュート!
日本ゴール左に決まる。
日本、前半終了間際に痛恨の失点。
前半終了:立ち上がりから技術で上回るブラジルが日本陣内に攻め込み、ペナルティーエリア手前から何度も仕掛ける。日本DFはボールを奪うことはなかなかできないがシュートコースを切ることで対応。
GK川口がこの日もスーパーセーブを連発し、何とかブラジルの攻撃を食い止める。すると、玉田がワンチャンスをものにし、思い切りの良いシュートで日本が先制。
日本はリードしたまま前半を終えたいところだったが、ロスタイムに守備陣が左右に揺さぶられ、ロナウドに同点ゴールを奪われた。
グループFもう1試合のクロアチア対オーストラリアは、前半を終えて1-1。クロアチアが1点差で勝てば日本に決勝トーナメント進出のチャンスが生まれる。しかし、まずは日本がもう一度仕切りなおし、2点差をつけて勝つ必要がある。
【後半8分】ブラジル ゴール!!!
ゴールまで25メートルやや左の位置でボールを持ったジュニーニョがそのままミドルシュートを放つ。無回転のボールはキーパー川口をかすめてゴールに吸い込まれる。
クロアチアが勝ち越し。クロアチア 2-1 オーストラリア
【後半14分】ブラジル ゴール!!!
中盤でボールを持ったロナウジーニョから左サイドを疾走するジウベルトにスルーパスが出る。パスを受けたジウベルトがエリア内に持ち込んでシュートを右サイドネットに決める。
オーストラリアが同点ゴールを決める。クロアチア 2-2 オーストラリア
【後半36分】ブラジル ゴール!!!
中盤でパスカットしたフアンがドリブルで駆け上がり、ペナルティエリア付近のロナウドにパスを出す。ロナウドが前を向き右足でシュートを放つ。ボールはゴール右隅に突き刺さる。
後半終了 主審の試合終了のホイッスル。
試合終了のホイッスルが鳴ると、中田英はグラウンドに倒れ込み、動けなかった。日本サッカー史上最強のメンバーがそろったジーコ・ジャパン。しかし、残ったのはF組最下位という結果だった。
ブラジルは後半8分、ジュニーニョペルナンブカノが勝ち越しゴールを決めた。後半14分にはジウベルトが3点目を入れた。後半36分、ロナウドがこの試合2点目のゴールを決め、ブラジルが
4―1
で勝った。
日本代表のワールドカップは終わった。
本気の“カナリア軍団”は甘くはなかった。前半ロスタイム、フリーのロナウドにヘッドで同点弾を食らうと、勢いを止められない。後半8分にジュニーニョペルナンブカノの急激に揺れるミドルをはじけず逆転を許した。同14分にジウベルト、そして36分にはロナウドにこの日の2ゴール目を献上し日本W杯史上ワーストとなる4失点。実力の差はあまりに大きかった。
ジーコ監督
前半終了間際に1点取られて、ブラジルを乗せてしまうと後半のようになる。第1戦のオーストラリア戦の1敗が効いた。あの負け方が痛かった。サッカーの世界の厳しさ。悔しいが致し方のない結果になった。
中田英
1回目はどういうものかわからなくて、2回目はホームで…。今回は初めてワールドカップを戦っていると思った。まだまだ、自分たちの力が足りなかった。
玉田
本当に悔しい。それだけ。(先制点に)あれでブラジルを本気にさせたのかと思う。顔つきも変わったと思う。W杯は一つでも勝つのが難しいと実感した。
中村
残念。(初めてのW杯は)課題の残る大会だった。ブラジルの方が一枚も二枚も上だった。今まではある程度期待に応えてきた感じだが、ジーコ監督の最後の大会でいいプレーができなかった。
巻
勝つしかない状況で何とか仕事をしてやろうと思っていた。手応えを感じる余裕はなかった。本当にうまくなりたいし、いろんな意味で大きくならないといけない。
加地
キープする時間が長くなく、難しかった。ブラジルはパスを出して、しっかり顔を出す繰り返しだった。基本が正確だった。
稲本
1点勝ったままハーフタイムに入れれば良かった。球際の強さやキープ力、勝負強さ、あと少しのところで差がある。
中沢
(収穫と反省は)いっぱいありすぎて分からない。
宮本
W杯はやりたいことができる大会ではない。初戦で敗れたのが悔やまれる。まだ世界のトップとは差がある。
川淵三郎・日本サッカー協会会長
チームとして戦う強い意志を持つことを言われてきたが、それよりも、もう一つ前の技術的なレベルの差がある。日本代表チームとしての限界はあるなという感じはした。
この話題のタイトルをいまさらながら後悔している、負けないではなく、勝つ!としなければならなかった。