無線で超高速LSI 処理速度10倍 広島大が開発、大規模集積回路(LSI)のチップに無線アンテナを組み込むことで、処理速度を従来の10倍以上に上げる技術を、広島大ナノデバイス・システム研究センターの吉川公麿教授らが開発した。 情報量の多いハイビジョン画像を携帯電話で楽しむことも可能になる技術だという。16日から米国ホノルルではじまった超LSI回路シンポジウム国際会議で発表する。
現在は、基板の上に並んだLSIチップを金属配線で結ぶことでデータのやりとりをしている。だが回路が微細化すると、隣り合った配線同士の干渉で信号の速度が落ちたり、消費電力が増えたりする問題があった。 吉川教授は、無線で直接信号をやりとりする方法を採用。チップの一部に、横0.45ミリ、縦2.98ミリの線状の受信用、送信用アンテナをそれぞれ組み込み、チップ同士を電波で送受信させた。空中を電波で飛ばすことで配線方式の10倍以上という毎秒1.16ギガビットのデータ送信ができた。 配線が不要なため、10センチ四方の基板を数ミリ角まで小型化することもできるといい、「周波数を高くするほどアンテナが小さくでき、超小型LSIが可能になる。従来の千倍以上の処理能力を目指したい」としている。 廣瀬全孝・産業技術総合研究所次世代半導体研究センター長は「無線でチップを高速接続する研究は世界的にも注目され、米国などが熱心に研究を進めている。実用化にもっとも近い技術として期待できる」と話している。