序盤はオーストラリアが押し気味に試合を進めていたが、先制したのは日本。前半26分、右サイドから中村俊輔(セルティック)がゴール前に上げたクロスボールを、相手GKが日本選手と重なって目測を誤り、ボールはそのままゴールに吸い込まれた。
前半26分: 日 右サイドから中村がクロスを入れ、そのまま直接ゴールに入る。日本1−0。
4年間、待ち続けたW杯の舞台で中村がゴール。勝利に結びつかなかったが、先制点を自慢の左足でもたらした。前半26分、右から左足でクロスを上げた。相手GKが柳沢ともつれ合って転倒し、ボールはワンバウンドしてそのままゴールに入った。「プレッシャーを感じるよりも楽しみたい」と試合前日に話していた背番号10は、両手を宙に突き上げて歓喜をかみしめた。
4年前のまさかの代表落選から、一回りも二回りも成長した。W杯初戦を前にしても、あくまで平静だった。「普通だよ。セリエAもコンフェデレーションズカップも、毎試合同じモチベーションで臨んできた」。
W杯を「通過点」と表現する。ただし「いい通過をしないと何も残らない」とも。世界が注目する舞台で良い結果を残してさらなる成長につなげるつもりだ。
後半もオーストラリアが終始押し気味に試合を進め、後半39分に左CKからのこぼれ球をケーヒルが押し込み、同点。同44分にはケーヒルに、同45分にアロイーシに決められた。
日本は26分に、中村のゴールで先制。しかし、84分、豪州のケーヒルのゴールで同点に追いつかれると、89分には再びケーヒルのミドルシュートが決まり、逆転された。さらにロスタイムにもアロイジにゴールを決められた。
後半39分: オ 深い位置からのスローイン。エリア内のケネディと中澤、川口が競るもボールが逆サイドに流れる。キューウェルがシュート体勢に入り駒野が必死のスライディングでディフェンス。しかし奥から詰めたケイヒルは押し込みゴール。オーストラリア1−1。
後半44分: オ 中澤のクリアボールをカリーナが前に落とす。アロイジが拾い中央のケイヒルへパス。フリーになったケイヒルが右足グラウンダーのシュート。ゴール左に決まる。オーストラリア2−1。
後半44分: オ 前掛かりになった日本は最終ラインに2人を残す捨て身の作戦。ボールを奪いカウンターに入ったオーストラリアのアロイジがドリブルで駒野をかわし、ゴール右へシュートを決める。オーストラリア3−1。
信じられない光景が繰り広げられた。パワー勝負を仕掛けてくるオーストラリアの波状攻撃を終盤まで抑えながら後半39、44分、ロスタイム…。残り6分を切った時間帯でまさかの3連続失点。次々とゴールネットを揺らされた。最後の最後でジーコジャパンの3バックが崩壊した。3度目のW杯で日本が世界の厳しさを突きつけられた。
悲劇の裏側に選手間のギャップがあった。MFケーヒルのゴールで同点に追いつかれた。あくまでも勝利に固執し得点を奪いに行こうとする攻撃陣と、速攻を警戒する守備陣の間で意識の違いが生まれた。勝ち点は3が欲しいのか、1で良しとするか…。DF宮本主将が証言する。「前の選手は点を取りに行きたがった。後ろはカウンターを食らいたくないから…。ベンチの指示? それはなかった」。試合中に起こったわずかな「すき間」が、大量失点につながった。
黒星スタートで、第2戦以降は日本にとって負けられない試合になる。左足からさらなるゴールを生み出し、日本を2大会連続決勝トーナメント進出に導きたい。
さあ!残り2戦も厳しい戦いが待っています。
現地で戦う選手や応援するサポーターを元気付けるメッセージを送りましょう!
ヒディンク監督「交代は完璧だった」
2006年W杯は現地時間12日(以下現地時間)、グループリーグ第1節が行なわれ、グループFの日本はオーストラリアと対戦し1対3と逆転負けを喫した。以下は、試合後のオーストラリア代表ヒディンク監督のコメント。
ヒディンク監督(オーストラリア)
「日本に0対1でリードされていたが、最後のところで逆転となった。暑い天気、乾いたピッチと、非常に困難な状況だったと思うが選手たちががんばってくれた。ハーフタイムに、このまま行こうと伝えた。後半開始10分で最初の選手交代を行ない、ふたり目、3人目と行なったのだが、交代は完璧だった。傲慢にはなりたくないのだが、監督の判断が当たったと言えると思う。
チームは決して諦めず、非常によく戦った。今日のような乾いたピッチではプレーも難しかったと思うが、いいサッカーをしたと思う。とても満足しているし、チームを褒めたいと思う。日本のプレーは分析したが、ドイツ戦で日本は中盤が非常によかった。中盤にいるキープレーヤーを研究し、この中盤で勝たなくてはいけないと思った。ここで勝てば我々にプラスに働くだろうと考えていた」
小泉純一郎首相「いいところまでいったんだけどね」・W杯の初戦敗北に
小泉純一郎首相は13日午前の閣議後に首相官邸に入る際、記者団からサッカー・ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で日本が12日の初戦をオーストラリアに敗れたことに感想を求められ、「うーん、いいところまでいったんだけどね」と肩を落とした。
日本の得点場面、審判が誤審認める?
豪州のGKシュウォーツァーは12日の日本戦後、この試合のエッサム・アブデルファタ主審が、日本の得点場面で誤審があったことを認めたと語った。
中村のクロスをGKと競り合った柳沢にファウルがあったというもので、ロイター電によると、「試合中に僕が主審に聞きに行ったら『自分の間違いだ。申し訳ない』と言われた」という。審判が試合中に自らの判定の誤りを認めて謝罪することは極めて異例の事態といえる。
エジプト人の同主審はさらに試合後、豪州のビドゥカ主将に対し「豪州が勝ってくれて、神様に感謝している」と話したという。これが事実なら、日本の得点後の判定の公平性にまで疑問を抱かせることになる。
劇的な勝利に豪各紙称賛−日本のゴールは「幻覚」
ゴールの雨がサッカルーズ(オーストラリア代表チーム)をW杯の歴史の中に突進させた−。13日付のオーストラリア紙オーストラリアンは、こんな見出しを掲げ、代表チームの劇的なW杯初勝利を祝福した。後半終盤2ゴールのケーヒルがヒーローだ。同紙は「ケーヒルがサッカルーズの夢を奈落の底から引き揚げた」と指摘した。
中村の先制点については「オーストラリアGKが日本の選手2人に妨害された」とし「汚点となる幻覚ゴール」「未熟なエジプト人主審の理解しがたい愚行」などと批判した。
同紙は先制した後の日本について「試合の残りを死にもの狂いで守るだけ。明らかにオーストラリアの方がいいチームだった」と評価を下した。
同日付の大衆紙デーリー・テレグラフも「オーストラリアのスポーツ史で最も見事な勝利だった」と称賛。今回の勝利で「サッカルーズは決勝トーナメントに進むためのボックスシート(有利な位置)にいる」と指摘した。
守備の崩壊とけが人続出−痛手から回復するか日本
最後に破たんした守備と、けが人の続出−。オーストラリア戦で終盤に3失点して敗れた日本は坪井も負傷退場し、文字通りの痛手を負った。精神的ショックも含め、18日のクロアチア戦までにあらゆる傷は回復するのか。
終盤の守備について宮本は「ボールの出どころに行けなくなったので、下がってしまった。いい集中はしていたが…」と悔しさを押し殺した。猛反撃を仕掛ける敵の圧力に押され、両サイドの駒野と三都主が下がってしまう。最終ラインは5バックのような形でずるずる後退。中盤でプレスが全く機能せず、こぼれ球もことごとく拾われる最も恐れた状況に陥った。
後半39分の失点は、気を付けたはずの自陣ゴール近くでの反則が引き金になった。直接FKこそ川口が好セーブではじいたが、そのボールをクリアして与えたスローインから同点ゴールを許した。川口は飛び出しながらボールに触れず、守備陣もこぼれ球に対応しきれなかった。
川口は、失点のショックで「みんなが下を向いてしまった。未熟だった」と言う。三都主は「ちょっと集中が切れた」。畳み掛ける相手に連続失点し、結果的には惨敗だった。
坪井の負傷で交代出場した茂庭も連係不足は明らか。福西や宮本と試合中に話し合う場面もあったが修復できなかった。ここまで、控え選手とレギュラーとの間で意思統一する機会がほとんどなかったことも響いた。
心配なのは坪井の状態だ。右足首ねんざの加地もまだ完治していない。守備陣は緊急事態に追い込まれた。
日本初戦の視聴率は49%−瞬間最高は61・2%
サッカー・ワールドカップ(W杯)日本−オーストラリア戦の生中継(NHK総合、12日午後9時50分から)の平均視聴率が、関東地区で49・0%、関西地区で44・3%だったことが13日、ビデオリサーチの調べで分かった。
1962年の調査開始以降、スポーツ中継の関東地区での最高平均視聴率は「東京五輪女子バレー決勝」の66・8%。サッカー中継(調査は77年以降)に限れば、W杯日韓大会の日本−ロシア戦の66・1%が最高で、今回は歴代7位。
NHKは「帰宅後、応援しやすい時間帯だったことなどが高視聴率につながった」とコメントした。
ビデオリサーチやNHKによると、関東の視聴率は試合開始時は46%強だったが、後半が始まった時点で55%台に上昇。瞬間最高視聴率は、後半でオーストラリアに同点にされる前の61・2%で、試合終了まで60%を超えたという。関西地区の瞬間最高視聴率は57・9%。
日本、望みつなぐには落とせない−第2戦のクロアチア戦
日本が1次リーグで2位以内に入り、決勝トーナメント進出の望みを残すためには、18日のクロアチアとの第2戦が落とせない一戦になった。
F組はブラジルの実力が抜きんでて、事実上残る3カ国で2位争いを演じるとみられている。日本がクロアチアに勝ち、第3戦のブラジルと引き分けに持ち込めれば勝ち点を4まで伸ばせる。ブラジルが日本戦以外を白星でくるなら、クロアチア−オーストラリア次第で可能性が生まれる。
また、クロアチアに勝てば、ブラジルに敗れて勝ち点3で終わったとしても、ブラジルが3連勝し、残りの3チームが1勝2敗で並ぶ可能性はある。ただ、第2戦に敗れると、13日のブラジル−クロアチアの結果にも左右されるが、最終戦を待たずに1次リーグ敗退決定の可能性もある。
疑問残ったジーコ采配−同点後の反撃も裏目
サッカー日本代表がオーストラリア戦で喫したショッキングな逆転負けの背後には、ジーコ監督の采配(さいはい)への疑問と、同点後の選手の焦りが浮かび上がる。
1点を追うオーストラリアは前線に次々と攻撃の駒を投入し、長いボールを使ったパワー攻撃に転じた。最終ラインと福西、中田英の守備的MFの踏ん張りで守りきるかに見えた後半34分。ジーコ監督は柳沢に代えて小野を投入した。
技術のあるMF陣を厚くして「ああいう(劣勢)時のパスワークとボール保持」(同監督)で試合を落ち着かせる狙いだったが、結果は裏目に出た。
守備的MFの位置に入った小野はむしろ攻撃的にプレーしたため、辛うじて保っていた守備の均衡が崩れた。こぼれ球を次々と拾われて波状攻撃を許し、連続3失点。中村は「伸二(小野)が入ったのは点を取るためだったが、中途半端になってしまった」。この言葉を聞く限り、監督の意図は選手に伝わっていなかったことになる。
守備を固めるなら稲本、前線から相手を追い回す運動量や速攻に期待するならFWを入れる手もあったはず。しかし監督の選択は、練習で好調さを維持する小野だった。戦術より選手の調子を最優先するジーコ監督特有の発想だろう。
追いつかれた後の拙速な攻めもいただけない。「勝ち点0」だけは許されない初戦。劣勢の流れを見極めれば、1−1で試合を終わらせる選択もあったはずだが、選手は我を失ったように攻めに出て失点を重ねた。
ジーコ監督がよく言う「子どものサッカー」だった。同監督は「リードしたときの戦い方が課題。いつもはできているのだが…」と言葉を濁した。