オフィシャルスーツは、海外チームとの試合の際に、記者会見や移動で着るスーツだ。作っているのは、サッカー発祥の地でもあるイギリスのブランド「ダンヒル」。00年からドイツのブランド「ヒューゴボス」に代わり、日本チームのスーツを手がけている。
今回は明るいグレーに青のネクタイ。白いシャツのボタンホールには日本代表の青をあしらい、ネクタイにはピッチとボールをデザインした。
スーツとネクタイの色は、宮本恒靖キャプテンがチームの要望を取りまとめて伝えてきたという。4年前のデザインに比べて色は明るく、スーツは細身になった。
今月8日〜6月22日の期間限定で同じデザインのスーツ(税込み20万4750円)250着を一般向けに売り出したところ、30〜40代のビジネスマンを中心に注文が入り、すでに品薄になりつつあるという。4年前は170着を販売した。
今年2月、選手が滞在するホテルに採寸をする「フィッター」4人が詰め、1人15分ずつ、40人をさばいたという。
「中田英寿選手は細部にこだわりがあり、30分くらいかかった。小野伸二選手や中村俊輔選手にもアドバイスしていました。ズボンも中田選手だけ、ダブルの折り返しを入れています」と採寸をした野出寛さん。
選手は腰回りと太ももが大きく、ウエストが細いため、既製服だとウエストが大き過ぎてしまうという。オンとオフとで体形が変わる選手もいるため、そのたびに採寸して作り直す。手間と時間がかかるが、W杯はそれだけの価値があると、PR担当の船戸美希さんは言う。
「選手が空港に到着するときや記者会見など、メディアの露出はかなりのもの。スポーツ選手はセレブですから」
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■スーツ人気
日本代表が移動や記者会見で着るグレーのオフィシャルスーツは、英国のしにせブランド「アルフレッド ダンヒル」製。00年から特別にデザインしたスーツ一式を提供している。
英国調の細身のスーツは、ジャケットの内側に日本サッカー協会のエンブレムが縫い込まれ、そで口のカフ(ボタンの部分)をめくるとチームカラーの青い生地がのぞくなど、こだわりの「代表仕様」。シャツやネクタイ、ベルト、カフリンクス、腕時計、指輪やブレスレットなど一式で約86万円(販売価格)だ。
「(公式スーツに選ばれたのは)長年培われたスーツ作りのノウハウが評価されているためでは。日本代表のスーツを提供できるのは光栄」と日本法人広報の島田理美さんは。限定販売した代表仕様のスーツは20万4750円と高額ながら、予定の250着が発売約1カ月でほぼ完売。腕時計も含め、一式すべて購入する人もいるという。
■広告塔
日本は英国ブランドだが、当のイングランド代表には、イタリアの「ジョルジオ・アルマーニ」のスーツが提供されている。こちらも代表仕様のうち、国内で買える丸首のセーター(2万9400円)とサングラス(2万3100円)の売れ行きが好調という。
アルマーニ氏は、サッカー選手を「メンタル面でもフィジカル面でも厳しく鍛錬されている本物のヒーロー」と称賛。同じブランドの「アルマーニ・ジーンズ」では、昨年からカカ選手を宣伝に起用している。
一方、イタリア代表の公式スーツは「ドルチェ&ガッバーナ」。日本法人広報の小野知寿さんは「サッカーはイタリアを代表する文化。イタリアのブランドとして、サッカー選手をサポートするのは当然のようです」と言う。
サッカー選手に愛用者が多い同ブランドのコレクション発表には、客席に中田英寿選手やウクライナ代表のシェフチェンコ選手、ポルトガル代表のフィーゴ選手など有名選手たちが顔をそろえる。4月には、移動用のスーツやデニムを提供している伊国内リーグのACミランに所属する選手の写真集を発売。下着の広告には、伊代表のカンナバロ選手やピルロ選手が見事な肉体美を披露し、話題になった。
■才色兼備?
世界に名だたるブランドがこぞって各国代表の公式スーツを提供する理由について、ファッション専門紙WWDジャパンの山室一幸編集長は「特にメンズを手がけるブランドには、ビジネス的に貴重」と言う。「女性と違い、ただ容ぼうが美しいというだけでは、男が男にあこがれることはない。その意味で、勝負の世界に身を置くサッカー選手は、強さと格好よさを兼ね備える数少ない存在だ」
さらに、サッカーは競技人口が多く、有名選手は国境を越えて活躍するため、世界的にアピールできる。「まして4年に1度のW杯。公式スーツの提供はブランドに有形無形の効果がある」。1人86万円は安いものなのかも。
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