国際自動車連盟がF1シリーズに今季から参戦していたスーパーアグリ・ホンダの井出有治のスーパーライセンス取り消しを決めたことが10日、分かった。
「現在の日本人ドライバーでは最高レベル」(鈴木代表)と評されていた男のF1の舞台は出場4戦、わずか完走1度で終わった。
ほとんどの場面で最後尾を走る井出について他チームのドライバーから「追い越されるばかり。大事故につながりかねない」とFIAにアピールがあった。第4戦のサンマリノGPの接触事故が印象をさらに悪化させた。運転技術を危険視する声が高まり、安全面という「大義」が情状酌量の余地を狭めていった。
FIAは第5戦の欧州GP直前に、鈴木代表に井出のライセンス取り消しを口頭で通告。9日に正式に文書で通知した。
チームの見切り発車のしわ寄せが井出にきた格好でもある。F1参戦の意向表明は昨年11月。短期間でF1チームを立ち上げるのは想像以上に過酷だった。鈴木代表が「開幕戦に車が間に合わないかと、眠れない夜もあった」と漏らしていたことがある。
F1車を初めて操る井出にとって、開幕前もシーズン中もテスト走行をほとんどできなかったのが、悲しい結末を生む原因になったといえる。
本番で練習より長い距離を走るような環境では技術の向上は期待薄。マシンも当初はバックミラーが見えず、無線も通じなかった。油圧系統も故障続きである。
日本国内で積み重ねた実力を発揮する前に“退場宣告”を受けた井出。「和製」を看板に掲げたチームにとっても大打撃となった。