シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星が地球に最接近します。5月12日の前後の期間には、肉眼でも見えるかもしれないと期待されています。国立天文台では、ゴールデンウィークにあわせて、「謎の彗星見えるかな?」キャンペーンをおこなうことにしました。2006年5月2日の夜から5月8日の朝までの6晩に、肉眼や双眼鏡などでシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星を観察し、このキャンペーンページから報告していただく、というものです。
シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星の謎とは シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann)は、1930年に、ドイツのシュヴァスマンさんとヴァハマンさんによって発見された小さめの彗星です。 5.4年の周期で太陽を一回りする短周期彗星で、ゆがんだ軌道のため、遠いときは木星の軌道付近まで離れますが、近いときは地球軌道の少し内側にまでやってきます。そのため、タイミングによっては、彗星が太陽に近づく頃に、地球にも大接近します。1930年の発見時にも、地球に0.06天文単位にまで近づいていました。ただし、タイミングが合わないと、小さい彗星ですので、なかなか見えません。そのため、1979年に再発見されるまで、なんと半世紀にわたって、行方不明となっていた謎の彗星なのです。 他にも謎があります。1995年に太陽に近づいたときには急激に明るさが上昇し、その後、彗星の核が3つに分裂しているのが観測されたのです。汚れた雪玉とも言われる彗星は、太陽の熱で融け蒸発していく間に、核が分裂してしまうことがよくあります。なかには、2000年のリニア彗星のように、ばらばらにくだけた破片がすべて蒸発してなくなってしまうものもあります。 シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(以下、SW3彗星)の場合、2000年に太陽に近づいたときには、3つに分裂した核のうち2つが戻ってきたのが確認され、新しい破片も発見されました。そして、今年の3月には、新たに4つの核が発見されました。さらに、4月6日の時点では、破片の数は数十個にもなっていることが確認されました。どんどん分裂を繰り返しているようで、もしかすると、今回も皆さんが眺めている最中に、また分裂していくかもしれません。分裂が起きると、急に明るくなることもありますので、注目したいところです。 ただし、ほとんどの破片はとても小さいので、いちばん明るい「C核」と呼ばれる核を観察してみましょう。 シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星の名前について: この彗星の正式名称は 73P/Schwassmann-Wachmannです。発見者がドイツ人であることから、ここでは「シュヴァスマン・ヴァハマン」と表記しています。英語圏では、「シュワスマン・ワハマン」と発音されることも多く、そのような表記も長い間使われてきています。 シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星はどこに見える? シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星は、5月12日、地球に0.08天文単位にまで近づきます。予想通りに明るくなっていけば、5等から4等級くらいになり、空が暗いところならば肉眼でも見えるかもしれない、と期待されています。しかし、13日が満月のため、ちょうどこの頃は月明かりがあり、彗星のようなぼうっとした天体は見えにくくなります。できれば、ゴールデンウィーク頃の、月明かりのないときに眺めてみるとよいでしょう。