ペルーのナスカ台地から、新たな地上絵を坂井正人・山形大助教授(文化人類学)らの研究チームが発見した。全長約65メートルで、角を持つ生物のようにも見える。作物の豊穣(ほうじょう)を願って描いたとみられるが、似たような図柄は他に例がなく、生物の種類はまだ不明だという。幾何学模様以外の大型地上絵がナスカ台地で見つかったのは、1980年代以来だという。
世界遺産に登録されている巨大な地上絵で知られるペルー・ナスカ台地で、人か動物をかたどったとみられる絵(縦約60メートル)や直線、渦巻き模様など約100個を発見したと、山形大人文学部の坂井正人助教授(文化人類学)らの研究グループが19日、明らかにした。文化庁は「日本人研究者がナスカの地上絵を新たに発見するのは、おそらく初めて」としている。 研究チームは05年7月、米の商業衛星の画像を分析中に新たな地上絵を見つけ、今年3月の現地調査で未発見のものだと確認した。ナスカ台地の南部にある。地上絵が集中する台地の北部地域からは離れていて、観光用の航空機も上空をほとんど飛行しないため、見つからなかったらしい。付近には車が走行した跡があり、地上絵の一部は破壊されていた。 米国の商業衛星が撮影したナスカ台地の画像を入手して昨年夏から解析を進め、今年3月末、上空を軽飛行機で飛んで肉眼でも確認した。ペルー文化庁の2000年の調査では見つかっていないが今回、直線、三角形などを含めると100以上の地上絵を新たに発見した。 見つかった地上絵は全長約65メートルで、ナスカ台地(東西約20キロ、南北約10キロ)の南部、ナスカ川の北岸付近にある。 上部に角のようなものが2つ伸びているが、これはナスカ期(紀元前100年―紀元600年ごろ)の土器に見られる図像表現という。「地上絵が何を示しているかは即断できないが、豊穣(ほうじょう)儀礼にかかわる図像表現ではないか」と研究グループはみている。2本の角のように見える部分は、ナスカ王国が栄えた紀元前100年〜紀元後600年ごろの土器によく見られる模様で、豊穣の儀礼に関係したと考えられるという。 研究チームは、今年1月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた陸域観測技術衛星「だいち」の画像も使って地上絵の分布図を作製する。坂井助教授は「全体像を把握し、破壊が進む地上絵の保護にも貢献したい」と話している。 坂井助教授らは2004年秋、地上絵が描かれた目的の解明や保全のため、絵の分布図を作成する作業に着手。米国の商業衛星が撮影した写真を分析したところ、これまであまり研究されていなかった台地の南西部に絵や図形があるのを見つけ、04年12月と今年3月に現地を訪れて確認した。 地上絵が描かれている台地は東西20キロ、南北15キロに及び、これまでに動植物や幾何学模様など700程度の図柄が確認されている。多くは紀元前1世紀から6世紀に描かれたとみられるが、描かれた目的には諸説がある。 これまでに現地では、全長約90メートルのハチドリなど巨大な動植物や幾何学模様の地上絵が発見されてきたが、ナスカ台地があまりに広大なため、詳細な分布図はまだ作製されていない。「地上絵はまだ調査が進んでおらず、未発見の絵はまだあるのでは」と話している。「詳しい分布図を作り解読するとともに、破壊が進む地上絵の保護にもつなげたい」と話している。 [ナスカの地上絵] ペルーの南海岸地方に広がるナスカ台地とその周辺にある。シャチ、サル、クモ、鳥類、花などの動植物を描いた具象的な地上絵は30以上、幾何学模様は数百、直線は約700本見つかっている。制作目的は天文暦説、豊穣儀礼説、宇宙人による建設説など諸説ある。1994年にユネスコの世界遺産に登録された。 ピラミッドは「内側から作られた」と3月30日、フランスの建築家が新説を発表。 世界の七不思議 の一つ、チンギスハンの宮殿跡 「世界七不思議」ナスカに未知の地上絵100個発見 「新・世界七不思議」清水寺などが最終候補地に 2006-04-29 21:52:32