百人一首をテーマにした展示施設「時雨殿」は今年1月27日、京都市右京区にオープン。「財団法人小倉百人一首文化財団」によって設立・運営されており、展示物に任天堂のゲーム技術が活用されているのが大きな特徴。同文化財団は任天堂相談役の山内溥氏が2006年1月末まで理事長を務めており、時雨殿の総工費約21億円は、山内氏個人から拠出されたことでも話題を呼んだ。
時雨殿へのアクセスは、京福嵐山線・嵐山駅から徒歩10分、またJR山陰本線・嵯峨嵐山駅および阪急嵐山線・嵐山駅からはそれぞれ徒歩15分となっている。 時雨殿を訪れてみて、まず印象的なのは立地の素晴らしさ。付近には世界遺産にも登録されている天龍寺など、著名な仏閣や料亭などが立ち並び、道には人力車が行き交っている。嵐山のシンボルである保津川(桂川)と渡月橋もすぐそばに位置しており、時雨殿に向かって歩くだけでも京都らしい、雅な風情を満喫できる。また時雨殿を懐に抱く小倉山は、鎌倉時代に藤原定家が撰集した小倉百人一首の発祥の地として知られており、まさに「百人一首の殿堂」にふさわしい場所に時雨殿は建てられている。
建物は2階建てで、1階がデジタル技術を駆使した各種体験施設、2階が歴史的資料の展示と百人一首大会の会場を兼ねた大広間となっている。施設の入口で靴を脱いで上がるようになっており、体験の仕方からして日本式なのも面白い。 体験フロアに入ると、まず受付カウンターで携帯型端末「時雨殿なび」が渡される。これは任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」をもとに、時雨殿用に開発したもので、外見やダブルスクリーン、タッチパネルといった主要な機能こそニンテンドーDSを引き継いでいるものの、様々な部分でカスタマイズがなされている。
まずニンテンドーDSの下画面(時雨殿なびは縦に持つので右画面となる)周辺に配置されている十字ボタンやABXYボタンは、時雨殿なびでは取り払われており、完全にタッチパネルだけで操作する仕様となっている。同じく電源ボタンやスタートボタン、セレクトボタンもないため、利用者の任意で電源をオン・オフすることはできない。体験時間は20分と制限されており、時間が来ると自動的に終了画面となる。音量の大きさのみ調整が可能。 最新のデジタル技術を投入しているものの、百人一首を題材としていることで、ゲーム世代よりもむしろ年配の来館者が多かったことが挙げられる。またそうした来館者の方々が、時雨殿なびを楽しみながらきちんと使いこなしていたことも印象的だった。直感的な操作と新機軸のゲームで敷居を下げ、女性層や年配層からの支持を獲得したといわれるニンテンドーDSだが、その敷居の低さはこの時雨殿においても発揮されていた。 実際に展示施設の携帯用端末に携帯型ゲーム機を使うという活用例は意外なほど相性がよく、時雨殿なびを操作してみると「ボタンのないニンテンドーDS」の違和感のなさに驚く。Webブラウザや、ワンセグ放送受信機としての開発も進められているニンテンドーDSだが、そうしたゲーム以外への応用例として、この時雨殿における時雨殿なびは大きな試金石といえるのではないだろうか。 また施設内の見どころは多いものの、比較的短時間で見てまわれるため、京都散策のスケジュールに組み込みやすいというのも時雨殿のメリットのひとつ。嵐山は桜の名所でもあるため、今の季節にはまさにうってつけの観光スポットといえる。京都を訪れる際にはぜひおすすめしたい新名所だ。 時雨殿 http://www.shigureden.com/ 任天堂 http://www.nintendo.co.jp/ 財団法人小倉百人一首文化財団 http://www.kyo.or.jp/ogura/index.htm