独占禁止法の改正(今年1月)により、談合などを自主申告すれば課徴金が減免される制度が、導入後わずか3カ月で初適用された。 「アメとムチ」が明確なのがこの制度の最大の特徴であるため、今回のケースを機に、ほかの業界に申告が波及する可能性もある。
この制度では、申告の「先着3社」が課徴金の減免対象で、とりわけ、立ち入り検査前に1番目に申告すれば、課徴金の全額と刑事告発が免除される。メリットはそれだけでなく、国土交通省は、同法違反に伴う指名停止期間について、減免対象社は通常の2分の1に短縮する方針を打ち出した。公共事業依存度が高い企業ほど、課徴金や損害賠償の支払い以上に、指名停止による経営上の影響が大きいとされるだけに、この差は大きい。 一方で、申告しなかったり、先着3社から漏れた企業は、課徴金納付、指名停止などの処分に加え「申告しなかったことにより、損失が増えた」などとして、経営陣が株主代表訴訟を起こされる可能性もある。申告の順番について他社と相談することは認められていないため、他社に先んじて「先着3社」の椅子を獲得するしかないわけだ。 企業に“自首”を促す減免制度の導入により、立ち入り前に情報を入手できることから、公取委の摘発能力は高まったともいえる。加えて、強制調査権を持つ犯則審査部も設置され、悪質なケースに関しては、これまで以上に刑事告発していくことが予想される。「身に覚えのある」企業は早急に内部点検することを迫られそうだ。
課徴金減免制度 価格カルテルや入札談合など、独占禁止法違反行為を公正取引委員会に自発的に申告した事業者の課徴金を減免する制度。米国、EU、韓国などで既に導入されている。日本では今年1月の独占禁止法改正で導入された。適用対象は公取委への申告順位が先着3社までで、立ち入り検査前の場合、1番目が全額免除、2番目は50%、3番目は30%減額され、立ち入り後は3社とも30%の減額となる。公取委は申告企業名を原則非公表としている。
談合自主申告の3社、課徴金を減免へ 首都高工事 旧首都高速道路公団(現首都高速道路)が発注したトンネル換気設備工事の入札をめぐり大手メーカーが談合していた疑いが強いとして、公正取引委員会は4社に総額約10億円の課徴金の納付を命令する方針を固めた。 課徴金の対象は本来は工事を受注した5社だが、談合を自主的に申告すれば課徴金を減免する制度を初めて適用する見通しで、自主申告した三菱重工業の課徴金が全額免除され、石川島播磨重工業、川崎重工業の2社は減額される模様だ。 命令を受けるのは、ほかに荏原製作所と日立製作所。 公取委の調べなどでは、各社は04年6月から11月にかけて旧首都公団が実施した首都高中央環状新宿線のトンネル換気設備工事の5件の入札で、あらかじめ受注業者を決めていた疑い。荏原、三菱重工など5社がそれぞれ29億円から60億円で落札し、受注額は計225億円に上った。 今回の談合疑惑をめぐっては、公取委は今年3月、メーカー各社に立ち入り検査に入った。三菱が検査前に自主申告したことが端緒だったとみられ、同社は課徴金を全額免除される見通しだ。立ち入り検査後にも数社が課徴金の減免申請をして協力を申し出たとみられ、うち申し出が早かった石川島と川崎重工も30%の減額を受けられる模様だ。 納付命令の事前通知を受けた各社には意見を申し述べたり、新たな証拠を提出したりする機会が与えられる。