自動車レースのF1世界選手権シリーズは10日、バーレーン国際サーキットで今季初戦・バーレーンGPが開幕した。フリー走行が開始され、今季から参戦する新チーム、スーパーアグリ・ホンダも、佐藤琢磨(29)と井出有治(31)の2人がマシン「SA05」でコースへ。鈴木亜久里代表(45)の長年の夢が、一つの形となった瞬間だった。
開幕まで、わずか四カ月。あまりの時間のなさを心配する声もあった。あのトヨタですら、二〇〇二年の参戦までに三年の準備期間を取っている。もう一年待って、準備を整えてからにすれば…という意見は多かった。鈴木氏自身、「無謀なチャレンジだってことは、よく分かっている」。他の数団体も新規参戦を目指している。「今年参戦しないと枠がなくなるからね」と決意は固かった。 昨年九月に佐藤が、所属したBAR(現ホンダ・チーム)での〇六年のシートを失ったことも大きな後押しだった。新規チームにとって経験あるドライバーは必要不可欠だけに、「彼ほど経験のある人が一緒にやってくれることになったんだから、僕にとって追い風が吹いていると思った」と鈴木氏。まさに今しかないタイミングだった。 F1のシート獲得にはチームとのコネ、持ち込むスポンサーなど、さまざまな要素が絡み、必ずしも速いドライバーが選ばれるとはかぎらない。特に日本で走るドライバーに壁は高い。その道を開くのがスーパーアグリF1の役割。それは二人目のドライバーにARTA一期生の井出を選んだことに象徴される。 「ウチのは間違いなく日本のドライバーに渡してあげられるシートだから」と鈴木氏。フォーミュラ・ニッポンなどに参戦する山本左近(23)は「F1への距離が縮まった。自分の可能性が、自分の結果にかかってくると実感できます」と、“アグリ効果”に武者震いする。 だが、まだ第一歩を記しただけ。序盤戦は四年前に撤退したチームが使っていた車体を改良して使う。五月には独自製作の車を投入する予定だが、苦戦は免れないだろう。「日本のチームとして出て、あまりカッコ悪いレースはできない」と鈴木氏。センターポールに揚がる日の丸を見上げ、君が代を歌う日のための挑戦は続く。 スーパーアグリF1 厳しい現実フリー走行最下位 バーレーン国際サーキット(1周5・412キロ)に元F1ドライバーの鈴木亜久里氏(45)が代表を務め今季から新規参入したスーパーアグリF1が、初お披露目の場でドタバタ発進した。