キヤノンは、手ブレ補正付きコンパクトデジタルカメラ「IXY DIGITAL 800 IS」を4月中旬に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は5万円弱の見込み。「IXY DIGITAL 800 IS」には、新設計の手ぶれ補正機構を採用。手ぶれ補正機構を組み込んだレンズの光軸方向の長さ(厚み)を従来機の10.3mmから5.3mmへ短縮、体積を従来機の5.1cm3から1.2cm3と1/4以下に小型化した。
スタイリッシュコンパクトデジタルカメラ「IXY DIGITAL」シリーズ初の光学式手ブレ補正機構「IS(Image Stabilizer)」を搭載モデル。さらにISO800での撮影に対応した。レンズも光学4倍に高倍率化している。海外では「PowerShot SD 700 IS」、「Digital IXUS 800 IS」として2月21日に発表済み。記録メディアはSDメモリーカード/MMC。 搭載する手ブレ補正機構は、IS制御用ICとISユニットを小型化した新規開発のもの。シフトレンズをレンズ鏡胴内で動かすのはこれまでと同じだが、補正レンズの支持に直径0.3mmのセラミックボール3個を使用するのが特徴。 これにより、同社の「PowerShot S2 IS」が搭載する手ブレ補正ユニットに比べ、ユニット容積を約4分の1まで小型化した。一般的なガイドバー方式の場合、軸と軸受けの間にスライドするための隙間が必要だが、点で受けるボール支持の場合は隙間を必要としない。 5群構成のレンズのうち第2群を支持するホルダを、鏡胴に固定したベースに対して光軸と直交する方向に動かす。ホルダをベースに支持、案内する機構として、2軸のガイドバーを使う方式もあるが、キヤノンは以前からボールで支持、案内する方式を採っていた。滑り案内より転がり案内の方が微小な動きを妨げないことを評価した。ただしボールはステンレス鋼製だった。 新機構では、ホルダを動かすボイスコイルモータをMC(ムービング・コイル)型からMM(ムービング・マグネット)型に変更した。従来は軽いコイルの方を動かすのが定石だった。 最近はネオジム-鉄-ボロン磁石が強力になり、この程度のストローク、推力ならば、質量はコイルも磁石も同じくらいになる。こうなると有利不利が逆転する。コイルを動かすためには、フレキシブル回路基板を使って、動く部分に配線する必要がある。フレキシブル回路基板からの反力を最小にするためには、あまりきつく曲げることができず、そのために用意するべき空間が大きくなる。MC型にすればこの空間が要らなくなり、小型化できるというわけだ。 問題は磁場。MM型は磁路を閉じた形にしにくい。今回の設計では,極限まで軽くするためにヨークなどを使わないからなおさらだ。ボイスコイルモータの周辺にまで磁場が広がることになる。強磁性体であるステンレス鋼製のボールがあり、しかもそれが動き回ると、周辺の磁場に乱れを起こす。これがボイスコイルモータを駆動する磁気、位置検出のためのホール素子の磁気に影響を与えては困る。そこでSiC(炭化ケイ素)で造ったセラミックス製のボールを採用した。ボールペンのチップなどに使うものと基本的には同じボールだ。 また、金属より熱膨張率が小さく、温度変化の影響を受けないこともセラミックスを採用した理由の一つ。ストロークが原点に対して0.1mm程度しかないため、動きには1〜2μmの精度が要求されるためだ。