韓国で上映中の映画「王の男」(イ・ジュンイク監督)が、観客動員数1180万人を突破し、「ブラザーフッド」(原題・太極旗を翻して)を抜いて同国最高記録を塗り替えた。時代劇で同性愛も扱った異色の作品だが、1200万人に達する勢いだ。
従来の韓国映画のヒットの定番は「シルミド」「シュリ」「JSA」など、朝鮮戦争や南北対立を題材に、巨額の制作費を投じた「大作」と決まっていた。 しかし「王」は違う。実在した朝鮮10代国王で、奇行や暴君ぶりが伝説になっている燕山君(ヨン・サングン)をモデルに旅芸人の男2人との愛憎を描いた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が「想像力豊かな作品」とほめ、野党が「王は盧大統領に似ている」と皮肉って政治問題にもなった。 制作費約40億ウォン(約4億8000万円)と大作の半分以下。昨年暮れの公開時には特に話題にならなかったが、口コミで広がった。韓国メディアは人気の秘密を分析する。王が好意を寄せる旅芸人(イ・ジュンギ)の美しさ、同性愛への関心、人生観を説く強烈なメッセージ……。 今では「韓国映画の強さの象徴」と激賞。映画館に一定の国産映画上映を義務づける「スクリーンクオータ」制度の大幅縮小を米国と合意したことも手伝い、「韓国映画はハリウッドに負けない」(文化日報)との論調も目立っている。 「王の男」は日本でも07年新春に公開される。角川ヘラルド映画と韓国の制作・配給2社が、初の試みという「日韓共同配給」方式をとる。 ■ http://www.kingsman.co.kr/