日本映画界に新しい探偵ヒーローが誕生する。松田龍平(22)主演の映画「悪夢探偵」(塚本晋也監督)が製作されることが分かった。 黒マントに身を包む主人公は、人の夢に入ることができる特殊能力を使って難事件を解決するダークヒーロー。塚本監督は、シリーズ化を視野に入れている。龍平の父親、故松田優作さんはテレビシリーズ「探偵物語」で絶大な人気を得た。「悪夢探偵」も異色キャラクターとして話題を集めそうだ。
悪夢探偵こと影沼京一は、江戸川乱歩の大ファンだった塚本監督が生み出した新キャラクター。探偵業は仕事ではないが、断り切れない事情から、特殊能力を使って捜査に協力し迷宮入り寸前の事件を解決する。人の夢に入って悪夢を取り除くことをなりわいにしているが、現実に絶望し、自殺願望も抱える。 金田一耕助や明智小五郎といった名探偵と比較しても屈折した難役に、塚本監督は龍平を指名した。2人は俳優として04年「恋の門」で共演。塚本監督は「若いけれど陰影のあるたたずまいや存在感があり、顔立ちも神秘的」という印象が強く、迷わず出演を依頼。龍平は「どういった作品になっていくのか、楽しみ」と意気込んでいる。 塚本監督は、97年と05年にベネチア国際映画祭で審査員を務め、02年「六月の蛇」で同映画祭審査員特別大賞を受賞。国際的な評価も高く、「悪夢探偵」も同映画祭出品を視野に入れている。また製作陣は来年公開後のシリーズ化も検討している。塚本監督は「心に傷を負った人間が、生きることに光明を見いだし、人間性を取り戻す成長物語にしたい」という。 龍平の父親優作さんも探偵役で多くのファンを魅了した。日本テレビ「探偵物語」(79〜80年)で演じた工藤探偵は、ハードボイルドな魅力ととぼけたキャラクター、独特のファッションやしぐさが若者の心をわしづかみにした。悪夢探偵は、黒マントを羽織り、現実と夢の世界を行き来するダークヒーロー。四半世紀を経て、息子が新しい探偵ヒーローをスクリーンに誕生させる。