2006年春、戦争に揺れる激動の昭和を駆け抜けたヒロインを壮大なスケールで描く波乱万丈の一代記が幕を開けます!
ヒロイン・桜子(さくらこ)は、音楽を愛するお転婆な少女です。好きなピアノで身を立てたい─桜子の強い望みは、父の突然の死と、戦争によって断ち切られようとします。しかし桜子は、様々な人々との出会いに励まされ、音楽への思いを燃やし続けます。
もう一つのテーマは家族です。突然一家の大黒柱を失った4人きょうだいが、戦火の中でも明るく支え合う姿は、家族という感覚が希薄になりつつある現代の人々に大きな感動を与えることでしょう。
物語は、徳川家康生誕の地で、八丁味噌の産地としても知られる愛知県岡崎市からスタートします。愛知県が連続テレビ小説の主な舞台になるのは初めてです。
有森桜子(ありもりさくらこ)…宮あおい
有森家の三女で、4歳の時に母を病気で亡くして以来、父の手で育てられる。明るく、感受性豊かで、自由な発想と行動力があり、姉弟思いでもある。幼い頃からピアノが大好きで、周囲の反対を押し切って、東京の音楽学校を受験するが失敗。東京で浪人生活をする中、ジャズの生演奏にふれ、将来、ジャズピアニストになることを夢見る。ところが、家庭の事情で進学を断念せざるを得なくなり、やがて幼馴染で味噌の蔵元「山長」の跡取り息子と婚約。「山長」の若女将としての特訓を受けながら、戦争で疲弊していく姉弟と支え合って生きていく。
有森源一郎(げんいちろう)…三浦友和
桜子の父。東京帝大在学中に郷里・岡崎のマサと駆け落ち同然に結婚。東京で家庭を持ち、研究助手としてつつましく暮らしていたが、マサが結核を患ったのを機に岡崎に戻る。市の土木課の嘱託となるがマサは他界。以後、男手ひとつで4人の子を育てる。趣味は鉱石集めと音楽。特に、当時国内で勃興したばかりのジャズに興味を持つなど自由な価値観の持ち主で、桜子の良き理解者だったが、事故で急逝する。
有森マサ…竹下景子
桜子の亡き母。桜子が幼い頃は小学校の教師として家計を支え、学校でよくピアノを弾いていた。その姿はいつまでも桜子の脳裏に焼きついていて、ピアノをかけがえのないものと感じる原点になっている。頑固、お転婆、思ったことは必ずやり遂げる桜子の性格は、まさしく母親譲りで、源一郎が桜子を愛おしく思う所以である。このドラマの語り手でもある。
有森笛子(ふえこ)…寺島しのぶ
有森家の長女。秀才で女子高等師範を出て、岡崎の女学校の教師になる。源一郎の死後、弟妹の父とも母ともなって、一家を支えていく。強気でプライドが高く、厳しい意見もピシリと言ってのける。弟妹が一人前になるまでは自分の結婚など眼中にないかに見えたが、風来坊の洋画家・杉冬吾と恋に落ち結婚。ところが夫の過去が原因で職を失い、その後も生活を省みない冬吾に振り回され続ける。
有森杏子(ももこ)…井川 遥
有森家の次女。おっとりした性格で、傷ついた動物がいると放っておけない優しい性格。笛子が桜子にきつくあたるのと正反対に、出来うる限り親身に応援しようとする。周りの勧めで見合結婚するものの、相手に恵まれず、離婚。その後、動物好きが高じて看護の道に。人の命を助けることに生涯を捧げる。
有森勇太郎(ゆうたろう)…松澤 傑
有森家の末っ子で、唯一の男子。甘えん坊のお調子者で、三人姉妹のミソっかす的存在だが、源一郎の死後は名目上、戸主となる。勇太郎を帝大に進学させることが有森家の最優先事項で、そのためには周りが犠牲を払うというプレッシャーの中で、見事、東京帝大に合格。家族の中でたった一人の男として、姉たちを守ろうとする気持ちだけはあるが、結果的には何も出来ず、やがて召集され出征していく。
有森磯(いそ)…室井 滋
源一郎の妹(桜子の叔母)。岡崎で最初の「モガ(モダンガール)」を自称。おせっかいで何でも首をつっこみたがる性格。銀座で洋服店を開いていたころ、裕福なパトロンとの間に子供を授かったが、本妻に子供を取り上げられ、傷心のうちに岡崎へ戻って来る。有森家に転がり込み、洋裁の仕事をしながら、居候。浪費家で家事は苦手。世の常識に囚われない価値観は、源一郎とも共通している。「山長」の女将・かねとは同級生だが犬猿の仲。
松井かね…戸田恵子
「山長」の女将。家付き娘で、老舗の暖簾に高いプライドを持っている。夫を尻に敷き、何でも自分で仕切らないと気が済まない凄腕女将。一人息子の達彦と桜子の婚約に初めは反対するが、達彦の出征を前に婚約を了承。達彦の復員が近いと聞き、桜子に蔵元の若女将としての厳しい特訓を課す。達彦戦死の報せを聞いてショックを受け、体を壊すが、桜子の看病をうける中で心を通わせていく。
松井拓司(たくじ)…村田雄浩
「山長」の主人。婿養子であることから、かねには頭が上がらない。性格的にも穏やかなお人好しで、陰ながら息子の応援をしようとする。しかしながら、戦局がきびしくなりかけた頃、あえなく病死してしまう。
松井達彦(たつひこ)…福士誠治
岡崎財閥のひとつである八丁味噌の蔵元「山長」の跡取り息子。旧制高校に進学したものの、音楽への思いを断ち切れず、音楽学校への転学を図る。桜子とは次第に思いを寄せ合うようになるが、父の死をきっかけに音楽を捨てることを決意し、蔵元を継ぐ。その後、笛子の失職で岡崎に戻らざるをえなくなった桜子と再会するが、自らの出征が間近に迫り、桜子にプロポーズをする。
浦辺仙吉(せんきち)…塩見三省
「山長」の職人頭。頑固者で口数は少ないが、心から八丁味噌を愛している。桜子の真っ直ぐな心根を認め、若女将修業で心身ともに疲れ果てた桜子を、陰になり日向になり支える。戦争の始まりとともに、味噌の原料も心許なくなっていく中、本物を作り続けようと苦闘する仙吉の姿に、桜子は味噌への思いを新たにする。
野木山与一(よいち)…徳井 優
「山長」の番頭。女将のかねには常に忠実である。物資統制が厳しくなってくると、合理的な生き残り作を画策し、仙吉と対立する。
高島キヨシ…井坂俊哉
「山長」の職人。達彦と同級生で、小学校時代はガキ大将として大手を振るうが、強面の父と桜子だけは苦手。やがて成長し異性に目覚めてからは、桜子にぞっこん惚れ込む。
沖田徳治郎(とくじろう)…八名信夫
源一郎の亡き妻・マサの父(桜子の祖父)。味噌蔵の元職人頭。徳川家康生誕の地に生まれたプライドがある古い価値観の持ち主。味噌へのこだわりも尋常ではなく頑固だが、憎めない愛嬌もある。反対を押し切って結婚した一人娘のマサが病死したことで、源一郎とのわだかまりは大きいが、育っていく孫はかわいいと思っている。桜子にとっては、やや煙たい存在。
西園寺公麿(さいおんじきみまろ)…長谷川初範
ヨーロッパ留学帰りのピアニストで東京音楽学校の教授。演奏会で岡崎を訪れた際、偶然桜子のピアノを耳にして、テクニック的には荒削りだが、人を楽しませることができる桜子の才能に注目する。桜子が東京で浪人生活を始めると、個人的にピアノを指導するなどの面倒をみる。
杉冬吾(とうご)…西島秀俊
前衛的な絵画に才能を発揮する青森育ちの青年画家。知人の間を渡り歩きながら、ひたすら自分の絵を描くことに心を砕くが、生活能力は全くない。ゆったり構えた器の大きな男で、津軽ことばでしばしば冗談をとばす。気まぐれで立ち寄った岡崎で、笛子と出会い、結婚。その後、政治思想が問題視された友人とのつきあいが原因となって笛子が失職し、東京に移り住むが、芸術のために家族に犠牲を強いてしまう。桜子とは、いわば同志として人生を語り合う仲で、彼女の生き方に多大な影響を与える。
ものがたり
昭和2年、7歳の桜子は、八丁味噌の蔵元で味噌桶に落ちてしまう。お転婆なのは母親がいないからと心配した周囲の人々は、父に見合い話を持ち込む。が、桜子は大反対。いたずらで見合いの席を目茶苦茶にして、祖父の家の納屋に逃げ込んだ桜子は、母の形見のオルガンを発見し、母を恋しく思う。そんな桜子をみた父は再婚を思い止まる。
10年後(昭和12年)。女学校に通う17歳の桜子は、好きなピアノで身を立てたいと、東京の音楽学校への進学を希望する。卒業したら見合いして結婚するものと思っていた家族は大反対。唯一の理解者だった父も災害で事故死してしまう。しかし桜子は諦めず、数々の障害を乗り越えて、ついに音楽学校入学を果たす。
東京で青春を謳歌する桜子。ダンスホールで生まれて初めてジャズの生演奏にふれ、将来はジャズピアニストになりたいと夢をふくらませる。そのころ、女子校の教師として家計を支えていた上の姉は風来坊の画家と結婚するが、彼の政治思想が原因で、姉は失職してしまう。桜子は弟の進学資金を捻出するために、音楽学校を休学して岡崎に戻る。そこで桜子は、やはり音楽学校を中退して、味噌の蔵元を継ぐために岡崎に戻った幼馴染の達彦に出会い婚約する。
その達彦に召集令状が届いた。残された桜子は姑に老舗の若女将としての特訓を受けながら、東京に出た姉や弟の世話をやく。やがて戦時統制で味噌の原料である大豆の調達ができなくなり、蔵元は開店休業状態に。落ち込む姑に代わって、店に活気を取り戻そうと、桜子は奮闘する。果たして桜子は再びジャズへの夢を取り戻せるのか!?