「太陽帆船」で木星探査をしようと、探査機「はやぶさ」を開発・運用し、小惑星「イトカワ」への着陸を成功させた宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授らが、太陽の光の粒子を大きな帆で受けて進む「ソーラーセール(太陽帆船)」探査機を開発し日本で初めて木星に飛ばす計画を立案している。
機構内には競合する天文衛星開発計画が他に2つあるが、2月の審査でゴーサインが出れば、2011年か12年の夏の打ち上げを目指す。 ソーラーセイルの起源と最近の状況 ソーラーセイルとは、風を受けて海を走る帆船のように、宇宙空間で大きく拡げた巨大な薄膜で太陽光を反射して推力を得る推進方法で、推進薬が不要なため、惑星探査などの自由度を大きく拡げることが期待されています。 宇宙船の推進力を得る方法としてソーラーセイルを使うアイディアは、すでに1919年、ロシアのフリードリッヒ・ツァンダーやコンスタンチン・ツィオルコフスキーによって提出されていました。それをツァンダーが、1924年に書いた論文で理論的に発展させました。しかし微小な光圧から必要な推進力を得るために不可欠な極軽量かつ宇宙での苛酷な環境に耐える膜面素材がなかったので、ソーラーセイルはこれまで実現できなかったのです。 ところが最近になって、素材及び製造技術の向上により、有望な膜面素材が開発され、諸外国でも実験を開始するところが現れて、ソーラーセイルが現実の課題としてクローズアップされる機運が出てきました。宇宙科学研究所(現在のJAXA宇宙科学研究本部)でも、実用化をめざしてソーラーセイルのワーキンググループを立ち上げ、現在までに以下のような開発・研究を進めてきています。 ・膜面素材の選択(厚さ7.5ミクロン(μm)のポリイミドフィルム) ・膜面の物性の取得と宇宙環境への耐性の確認実験 ・膜面の製作・収納方法、展開機構の研究開発 ・数値計算による展開挙動解析手法の開発 ・スピンテーブル試験、真空落下試験、気球実験。 新探査機は、木星や付近の小惑星群の近くを通りながら観測を行う親機と、途中で分離して木星を周回する子機で構成。木星への突入機を追加する案もある。 ◆太陽帆船用の薄膜帆を宇宙で展開 http://www.isas.ac.jp/j/snews/2004/0809_s31034.shtml