アサヒビールは、ビール醸造後のビール酵母の成分に、人体や環境にやさしい農薬の製造・販売事業に参入する方針を明らかにした。農作物の病害を防いだり収穫量を増やす効果のあることが分かったため、商品化して来年1月から発売する。大手ビールメーカーが農薬事業に乗り出すのは初めてで、5年後には売り上げ20億円を目指す。
商品名は「豊作物語」。健康食品などを販売する100%子会社アサヒフードアンドヘルスケア(アサヒF&H)が製造・販売する。ビール酵母から取り出した成分から作った液体で、トマトなどの根を植える前に浸したり、葉に散布するなどして使う。 病原菌を殺すのではなく植物の免疫力を高めて病害を予防するのが特徴で、人体や農作物に害を及ぼす恐れのない「特定農薬」の申請も検討している。 すでにレタスやイチゴの畑など20か所で効果を確認している。特に、トマトが感染しやすく、有効な対処法が見つかっていなかった伝染病「根腐萎凋(ねぐされいちょう)病」の防止効果がわかり、長野県内の農家などから早期の商品化を求める声が強まっていたという。 アサヒF&Hは、ビール酵母を使った整腸剤や栄養補助食品などを販売しているが「農業関連商品を新たな収益源の一つに育てたい」(旭興一社長)考えだ。