「おなかに来る風邪」と呼ばれる感染性胃腸炎が急増中だ。昨冬には広島県の特別養護老人ホームなどで多くの死者を出しており、乳幼児や高齢者には、特に注意が必要だ。 全国約3000の小児科を定点観測している国立感染症研究所によると、感染性胃腸炎の報告は10月半ばごろから増え始め、この1週間では1医療機関当たり11.75人が受診。山口、佐賀、福井、福岡の4県では20人を超えた。昨冬のピークは12月20日〜26日で全国平均15.83人だった。
感染性胃腸炎は腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、発熱が主症状で、ウイルスや細菌、原虫などによって引き起こされる。今の時期はノロウイルスが大半を占めるとされており、昨年暮れから今年の年始にかけて広島県の特養で入所者7人が死亡したのもその集団感染だった。ノロウイルスは寒いほど長生きすると考えられている。 通常は適切に水分補給すれば1〜3日で回復するが、乳幼児や高齢者では急激な脱水症状や吐物による窒息などに注意が必要だ。下痢止めは、病原体を腸内にとどめ、症状を悪化させかねない。 予防には、例えばカキなどの食べ物を85度で1分以上加熱してウイルスを殺すほか、トイレ後などの手洗い徹底が大切だ。特に、保育施設や高齢者施設では、配膳(はいぜん)や、吐物や便の適切な処理と消毒が重要だ。 感染研の岡部信彦・感染症情報センター長は「感染の疑いがある人は入院・入所者の見舞いを避けるなど、うつさない配慮も必要。症状がなくなっても1週間程度はウイルスが出ているので油断しないで」という。 2005-12-25 12:15:46