これは途上国のデジタルデバイド解消を目指して、教育向けに必要な機能と性能を備えたノートPCを100ドルで提供しようというプロジェクトから誕生した。MIT Media Labの創業者兼会長のNicholas Negroponte氏が「One Laptop Per Child(OLPC)」という非営利組織を結成、同プロジェクトはOLPCとMIT Media Labによって進められている。
最終デザインは"子供たちのためのノートPC"を表すために、子供用の鉛筆をイメージして緑と黄色に塗り分けられている。キーボードで入力する通常のノートPCスタイルで利用できるほか、ディスプレイを回転させるとメディアビューワー、ハンドヘルドや電子ブック端末に早変わりする。
対象地域では電力が貴重になるため、省電力動作を重視しており、ディスプレイはカラーと白黒の2モードに対応する。内蔵のクランクを使った手動の電力供給も可能。1分間の回転で白黒モードならば、およそ40分間駆動するように設計されているという。このほか最終案では、500MHzのCPU/1GBのメモリを搭載、USBポートを装備し、Wi-Fi機能を備える。OSはオープンソース、おそらくLinuxになるだろうとしている。
最終デザインがまとまったことで、今後は$100ラップトップを"実現"するための課題に取り組むことになる。MIT Media Labは、100ドルという価格を実現するために3つのポイントを挙げている。
1つはディスプレイのコスト。これはポータブルDVDプレイヤーの普及で、家電向けに提供されている低価格で高性能なディスプレイを利用できるようになった。
2番目がソフトウエア。これは利用モデルを明確にし、オープンソース・ソフトをカスタマイズすることで対応できる。最後が量産である。子供たちに教科書を渡すように1人にノートPCを1台ずつ提供するのは、デジタルデバイド解消の目標であると同時に100ドルという価格を実現するための条件でもある。
そのため関心を示す国には100万台以上からの注文で打診しているそうだ。Negroponte氏によると、タイやブラジルを含む6つの国の政府が強い関心を示しており、今後製造業者との交渉がまとまれば、来年の2月か3月には受注にこぎつける可能性が見えているという。ただし、途上国にとっては大量の注文は負担になる。現時点では100ドルでの提供は困難な状態で、110ドル近くが現実的な価格だとしている。
また$100ラップトップが現実味を帯びてきたことで、もう1つの心配事が出てきた。転売である。たとえばナイジェリアの平均年収は1000ドルであり、子供たちにノートPCを配布すれば、それを現金に換えてしまう可能性が高い。そこで、数日間ネットワークにログインしなかったらマシンが動作しなくなるなど、二次的な市場取引への対策を検討している。
■ World Summit on the Information Society
http://www.itu.int/wsis/
■ MIT Media Lab
http://laptop.media.mit.edu/
100ドルノートパソコン、台湾企業が量産決定
マサチューセッツ工科大学(MIT)の開発チームは13日(現地時間)、「100ドル・ノートパソコン」の量産を、台湾の広達電脳社に委託すると発表した。広達社は米デル社などの製品を手がけるノート機受託生産の最大手。100ドル構想は、アイデアの段階から本格生産に移行する。
100ドル・ノートは、各国政府が一括購入し、児童に無料配布することを想定しているが、大人のパソコン・ユーザーの関心も高いため、商業的な機種の生産も検討することになった。
広達社は、世界のノート機の2割以上を生産している実績がある。MITのチームは、複数の企業から条件提示を受け、広達社を選んだ。当初は500万〜1500万台を生産。手始めに7ヵ国(中国、インド、ブラジル、アルゼンチン、エジプト、ナイジェリア、タイ)へ、各100万台程度を供給する。ソフト開発を促すため、他の国々にも一定量を出荷する計画だ。時期は2006年第4四半期が目標。
OSはリナックスを採用。政府に大量購入させることで、価格を100ドル程度に抑える。電力が不自由でも使えるように、手回し式の発電装置も内蔵した。128MBのDRAMメモリーと500MBのフラッシュメモリーを搭載、ハードディスクはないが、USBポートを4基そなえる。プロセッサーは500MHz。
広達社は、生産だけでなく細部の設計も受託するODM契約を締結。同社の技術者も詰めの開発作業に協力する。
100ドルPCプロジェクト、最初の1000台製造に成功
ニコラス・ネグロポンテ氏(マサチューセッツ工科大学メディアラボ名誉会長)らが率いる、世界中のすべての子どもへのパソコン供給を目指す「One Laptop Per Child」プロジェクトは11月21日、台湾Quanta Computerの上海工場で、100ドルのノートパソコン「XO」の最初の1000台が製造されたと発表した。
これら1000台には、高いところから落下させる、子どもにキーボードを強く叩かせるなどを含む、厳密な環境テストが行われ、汚れやほこりに対する耐性も試される。ソフトウェアメーカーもアプリケーションのデバッグを担当する。
テスト終了後、Quantaは2007年初めに次の製造を行い、完成したパソコンはOLPCプロジェクトに参加する最初の国々、アルゼンチン、ブラジル、リビア、ナイジェリア、タイの学校に送られる。子どもたちによる実際の使用をテストの最終段階とし、2007年夏から量産に入る予定という。
OLPCの「XO」、ついに量産開始
One Laptop per Child Foundation(OLPC)のノートPC「XO」が、度重なる延期を経て、ついに量産体制に入った。台湾の廣達電腦(クオンタ・コンピュータ)は現地時間11月6日、上海北西に2時間いったところにある常熟に新設した製造工場で、XOの生産を開始した。このPCは貧困国の子どもを対象にしたノートPCで、長らく待たれていた。
量産開始により、開発途上国に住む子どもたちは今後、オープンソースの頑丈なノートPCを手にすることが可能になるだろう。OLPCはすでに、ウルグアイとモンゴルの子どもたちに向けたXOを受注したことを発表した。「「Give 1 Get 1」」プログラムに参加する米国およびカナダ在住者の手元に同製品が届くのは12月に入ってからになる見込みとなっている。これは、オンラインでXOが販売されるごとに、開発途上国の子どもにXOを1台寄付するというプログラム。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授で、非営利団体OLPCの創設者であり会長のNicholas Negroponte氏は声明で、「One Laptop per Childプロジェクトにとって、今日は、とりわけ記念すべき日だ。多くの否定的な意見がある中、クオンタをはじめとする素晴らしい協力者たちのおかげで、われわれは世界で最も先端的かつ環境に優しいノートPCを開発し、生産を開始した。これは、子どもたちに学習意欲を吹き込むことを目的としている」と述べた。
クオンタはこのところ、生産能力を増強しており、XOの生産を順次増やしていくという。
XOの目的と可能性を歓迎する声は多いが、普及への道は険しい。生産の延期により競合する低価格PCに顧客獲得のための時間を与えてしまったことに加え、当初想定されていた100ドルという価格が上昇し、200ドル近くになっているためだ。
■ http://www.laptop.org/
■「Give 1 Get 1」