「蟲師(むしし)」は、「AKIRA」「スチームボーイ」などで世界に注目される大友克洋監督が、最新作として劇場用実写映画化に取り組んでいる。世界3大映画祭の一つ、第63回ベネチア国際映画祭(8月30日〜9月9日)の上映作品として出品が決まった。 『AKIRA』(1988)で“ジャパニメーション”の表現力を世界にアピールした大友克洋による劇場用長編アニメ(2004年公開)。製作期間9年、制作費24億円という大作だ。 『スチームボーイ』時は19世紀半ば、舞台は世界初の万国博覧会を控えたイギリス。少年レイは、祖父ロイドと父エディが発明した謎の球体・スチームボールを手にしたことから、アメリカのオハラ財団の手の者に捕われる。連れて行かれたのは、巨大な機械の要塞・スチーム城。そこで財団は、超高圧の蒸気を封じ込めたスチームボールの力を武器として売りさばこうとしていた。レイはそれを阻止しようとするが…。
「蟲師」は、漆原友紀の同名人気コミック(講談社刊)が原作。明治時代後期を舞台に、人には見えない命の根元である“蟲”を感じることのできる主人公が事件を解決していくSFファンタジー。 すでにTVアニメも放映され、人気を博している。実写映画版ではオダギリジョー、江角マキコが主演し、来冬以降に公開予定。大友克洋の実写映画は、91年の「ワールド・アパートメント・ホラー」以来2作目になる。 本作はジャパン・デジタル・コンテンツ信託株式会社(JDC信託)が新たに組成した「開発型のファイナンス・スキーム」を適用。信託ファンド「シネマ信託〜蟲師〜」により、約10億円の総製作費のうち、製作費約2億6000万円、配給経費約3億7000万円を調達するという。ファンドの募集は来春で、1口5万円〜10万円を予定してるという。
オダギリジョー「蟲師」でベネチア参加 8月30日に開幕する第63回ベネチア映画祭出品作が27日決定し、最高賞金獅子賞を争うコンペティション部門にオダギリジョー(30)主演の「蟲師(むしし)」(大友克洋監督、来春公開)とアニメ映画「パプリカ」(今敏監督、今冬公開)が出品される。オダギリは今年、ベルリン、カンヌ映画祭にも参加しており、1年で世界3大映画祭に参加することになった。授賞式は9月9日に行われる。 海外での評価が高いオダギリの人気は、世界3大映画祭参加でさらに高まりそうだ。2月には海外初出演作となった「ビッグ・リバー」がベルリン映画祭のフォーラム部門に招待された。兄弟の関係を描いた「ゆれる」は、5月のカンヌ映画祭監督週間部門に出品され、20社以上の海外メディアから取材を受けた。 「蟲師」で初めて参加するベネチア映画祭についてオダギリは、「奇妙で不可思議な世界に引き込まれ、大友監督がこれを撮影したら面白い作品になりそうだと出演を即決しました。ベネチアから世界の方々に向けて、日本のユニークな文化を紹介できることを楽しみにしています」と喜んでいる。 同作は、動物でも植物でもない、生命の原生体、蟲と人との共生を描いた。オダギリは蟲の生態を解明する蟲師ギンコを演じた。約250万部を売り上げた人気コミックが原作で、実写化は不可能とも言われたが「AKIRA」「スチーム・ボーイ」などのアニメで知られる大友監督が構想2年をかけ完成させた。ほかに江角マキコ、大森南朋、蒼井優などが出演している。また、オダギリは、特別上映作品として招待された、役所広司主演の「叫(さけび)」(黒沢清監督、来春公開)にも出演している。 そのほか、ジブリの新作アニメ「ゲド戦記」(宮崎吾朗監督)などが招待作品に選ばれた。