ナノメートル(ナノは10億分の1)単位の超微細な炭素材料、カーボンナノチューブ(CNT)を発見した「生みの親」が、このほど東京都内で開かれたシンポジウムで安全面からナノ粒子を研究していくことの必要性を訴えた。ナノ粒子は現在、電子部品、化粧品などに使われているが、第一人者が「安全研究」に言及したことは注目される。
シンポジウムは26日に開催された「期待される炭素ファミリー」で、カーボンナノチューブの発見や、量産化をリードした信州大工学部の遠藤守信教授と名城大理工学部の飯島澄男教授らが参加。 遠藤教授はCNTと、形状が似ているアスベスト(石綿)を埋め込んだマウスの皮膚組織や血液中の炎症反応などを調べた結果を発表。 アスベストは強い毒性を示したが、CNTについては「差し迫った毒性はない」とした上で、「ナノテクノロジーによってアスベストと同様の過ちを繰り返してはいけない」と訴え、多面的に研究しデータを集積していくことが重要だと指摘した。 飯島教授も「ナノ粒子の長期的な安全面での検証は必要だ」と話した。遠藤教授は10年ほど前から、信州大医学部の研究者と共同でさまざまな炭素素材の毒性を研究してきた。 シンポジウム後、毎日新聞の取材に「だれかがやってくれるのを待つのではなく、幅広い分野の人たちと協力して取り組む必要がある」と語り、開発者自身もリスク評価に関心を持つべきだとの考えを示した。