スウェーデンのカロリンスカ研究所は3日、「ヘリコバクター・ピロリ菌の発見と胃炎や胃かいようにおける役割の解明」が人類にとって有益と認められその成果に対して2005年のノーベル生理学・医学賞をオーストラリア・西オーストラリア大のバリー・J・マーシャル教授(54)と同国のJ・ロビン・ウォレン医師(68)に授与すると発表した。
100 年以上前からヒトを含めた動物の胃に細菌が存在することが論ぜられてきたが、1983 年オーストラリアの病理学者 Warren と消化器病医 Marshall とによりヘリコバクター・ピロリ (Helicobacter pylori ) は初めて慢性胃炎患者の胃粘膜より分離培養された。 今回のノーベル生理学・医学賞の授賞理由は「ヘリコバクター・ピロリ菌の発見と胃炎や胃かいようにおける役割の解明」が人類にとって有益と認められその成果に対して。賞金1000万スウェーデン・クローナ(約1億4600万円)は2人で分ける。授賞式は12月10日にストックホルムで行われる。 ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌) (Helicobacter pylori) 『へりこばくたー・ぴろり(ぴろりきん)』 ヘリコバクター・ピロリは世界人口の過半数に感染していると考えられています。 感染経路は糞-口感染、経口感染と考えられています。ヘリコバクター・ピロリは胃粘膜に生息する3〜5μmのグラム陰性桿菌で強力なウレアーゼ活性を有し、サイトトキシン、活性酸素、活性酸素から生成されるモノクロラミンなどにより胃粘膜傷害が引き起こされ、胃・十二指腸潰瘍の原因とされています。 またヘリコバクター・ピロリに感染したら全ての人が胃・十二指腸潰瘍になるわけではありません。感染したヘリコバクター・ピロリの性質の違いや感染を受ける宿主の違いに加えて日常の食生活などの環境因子や感染を受けてからの時間の経過が関連し異なる疾患が発生すると考えられています。
胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍などと深い関係にあると考えられている菌。 胃腸の病気の代表的なものに、胃潰瘍・十二指腸潰瘍(かいよう)があります。この病気は従来、ストレスや喫煙などがその原因とされていました。最近になり、この潰瘍の原因として、細菌が関わっていることが明らかになってきました。 強酸性の胃の中でほかのほとんどの細菌は死滅してしまう中、まわりをアルカリ性にして酸を中和しながら生き続けている。このピロリ菌が出す毒素によって胃の粘膜が刺激され、炎症を起こして潰瘍をつくると言われている。
[ピロリ菌]免疫酵素利用し胃がん発生 京大グループが解明 京都大大学院の丸沢宏之助手(消化器内科)らのグループは、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんを発症させる仕組みを、人やマウスの細胞実験などで明らかにした。 ピロリ菌が、胃粘膜細胞をがん化するために、通常は免疫細胞にしかない「AID」と呼ばれる酵素を利用していたことを突き止めた。丸沢助手らは「細菌が原因でがんができる唯一の例。早期のピロリ菌除菌が胃がん予防に効果的だといえる」と話す。成果は2日、米医学誌「ネイチャー・メディシン」電子版に掲載される。 ピロリ菌は幼児時に経口感染し、胃に数十年すみ続け、慢性胃炎を起こす。日本では40代以上の7割が感染しているという。胃がんでは最も重要な発がん因子であることが判明していたが、具体的な仕組みは分かっていなかった。 グループは人体の免疫機能を担うAIDが、本来は免疫細胞のBリンパ球にしかないはずなのに、慢性胃炎を起こした細胞に多く現れていることに着目。ピロリ菌を人為的に感染させた胃粘膜細胞にはAIDが多く現れ、重要ながん抑制遺伝子を変異させるなど、がん化する一連の仕組みを確認した。 AIDの働きを抑制するなどの新治療法開発の道も開けそうだという。
ピロリ菌と胃がんのメカニズムを解明…北大研究チーム 胃の中に生息するヘリコバクター・ピロリ菌が、胃粘膜を壊し、胃炎や胃かいよう、胃がんを引き起こすことに関与するたんぱく質「PAR1」を、北海道大遺伝子病制御研究所の畠山昌則教授らのチームが特定し、17日付の英科学誌ネイチャーに発表する。 Click here to find out more! ピロリ菌と胃がんの関係を証明する成果で、胃がんなどの予防・治療につながると期待される。ピロリ菌は内部にCagAというたんぱく質を持ち、胃粘膜を形成する上皮細胞に付着すると、まず注射針のようなトゲでCagAを打ち込む。 上皮細胞は互いに結合して胃粘膜の働きをするが、細胞内に侵入したCagAは、細胞結合にかかわるたんぱく質「PAR1」に取り付き、その機能を失わせることを確認した。 その結果、上皮細胞がはがれ落ち、進行すると胃炎や胃かいようを引き起こす。さらに、CagAが細胞増殖を制御するたんぱく質に取り付くと、これが活性化され、上皮細胞が異常に増殖、胃がん発症の原因となることもわかった。畠山教授は「胃がんは肺がんと並んで日本人の死因の上位を占める。研究成果がピロリ菌除菌の推進などを促し、死亡率低下につながることを期待したい」と話している。
胃の中に生息するヘリコバクター・ピロリ菌が、胃粘膜を壊し、胃炎や胃かいよう、胃がんを引き起こすことに関与するたんぱく質「PAR1」を、北海道大遺伝子病制御研究所の畠山昌則教授らのチームが特定し、17日付の英科学誌ネイチャーに発表する。 Click here to find out more!
ピロリ菌と胃がんの関係を証明する成果で、胃がんなどの予防・治療につながると期待される。ピロリ菌は内部にCagAというたんぱく質を持ち、胃粘膜を形成する上皮細胞に付着すると、まず注射針のようなトゲでCagAを打ち込む。
上皮細胞は互いに結合して胃粘膜の働きをするが、細胞内に侵入したCagAは、細胞結合にかかわるたんぱく質「PAR1」に取り付き、その機能を失わせることを確認した。
その結果、上皮細胞がはがれ落ち、進行すると胃炎や胃かいようを引き起こす。さらに、CagAが細胞増殖を制御するたんぱく質に取り付くと、これが活性化され、上皮細胞が異常に増殖、胃がん発症の原因となることもわかった。畠山教授は「胃がんは肺がんと並んで日本人の死因の上位を占める。研究成果がピロリ菌除菌の推進などを促し、死亡率低下につながることを期待したい」と話している。
胃炎を起こすピロリ菌の祖先は、深海の微生物? 胃炎を起こすピロリ菌の祖先は、深海にすむ微生物だった――。海洋研究開発機構の中川聡研究員が深海にすむ微生物のゲノムを解読し、こんな結果を得た。今週の米国科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。 中川さんは有人潜水艇しんかい2000で、水深千メートルの熱水孔から微生物を300株採取。水素ガスや硫化水素の濃度など、深海の環境を再現して培養することにも成功し、2株のゲノムが256万塩基対と187万塩基対であることを解読した。さらに詳しく分析すると、この微生物は、ピロリ菌や食中毒を起こすカンピロバクターの祖先であり、遺伝子レベルでは近縁と分かった。 この微生物に病原性はないが、感染を含む、他の生物との共生関係にかかわっている遺伝子群も共通していた。 中川さんは「人間に身近な病原体と深海底の微生物が似ていたのは予想外。病原体や微生物が大型生物と共生するまで、どう進化してきたのかを探る大きな手がかりだ」と話している。
この微生物に病原性はないが、感染を含む、他の生物との共生関係にかかわっている遺伝子群も共通していた。
中川さんは「人間に身近な病原体と深海底の微生物が似ていたのは予想外。病原体や微生物が大型生物と共生するまで、どう進化してきたのかを探る大きな手がかりだ」と話している。