科学誌ネーチャー最新号は、オリーブ油の効果に関する調査結果を掲載した。フィラデルフィアにある研究団体が、ペンシルベニア大学と協力して3年間の追跡調査した結果、オリーブ油の中でも特に「エキストラ・バージン」と呼ばれる高純度オリーブ油が、解熱・鎮痛剤として効果があることを突き止めた。
オリーブの木は地中海沿岸諸国が原産とされる。その果実をつぶして作るオリーブ油は、かねてから食用のほかに、薬用としても重宝されてきた。そのオリーブ油に再び注目が集まっている。なぜなら、オリーブ油を摂取すると、炎症を下げるのに役立ち、各種の病気の予防にもなるという研究結果が発表されたからだ。オリーブ油は、これまでも病気の治療に効能あるとして民間療法でも幅広く使われてきただけに、今後オリーブ油の需要が高まる可能性もある。 解熱・鎮痛剤としては市販のイブプロフェンが人気を集めているが、50グラムのオリーブ油の摂取は、鎮痛用に摂取されるイブプロフェンの分量の10%に匹敵するという。 高純度オリーブ油は、一さじ、口に入れると、飲み込んだ後、のどがひりひりするという。液体のイブプロフェンも摂取すると、同じような症状が現われるのをヒントに、3年前からボランティアを募って実験を行なった。 米ニュージャー州にあるギリシャの食材店や、フィラデルフィアのイタリアのマーケットから10種類のオリーブ油を購入、実験には17人のボランティアが参加した。その結果、摂取後にのどが最もひりひりするのが、最も炎症を下げることが分かった。そのオリーブ油が「エキストラ・バージン」だったという。 「エキストラ・バージン」の中に炎症を食い止める、ある成分が含まれている。しかし、熱に弱いため、パスタのような出来上がったものの上に、ある一定量を振りかけるのがいいという。 学者仲間からは、オリーブ油を摂取するとひりひりする感覚はあったが、これを重要な問題だと考えて研究を進めたのは、大きな成果だとの声が上がっている。 これも対し、食事療法士の中には、健康面からオリーブ油の大量摂取には注文を付けている。オリーブ油は、大さじ一杯に付き100から110のカロリーがある。米国では脂肪の取りすぎでの肥満が問題化しているだけに、やみくもに摂取するのは健康上好ましくないかもしれない。 一方、英オブザーバー(電子版)によると、ネーチャーの発表を受けて「エキストラ・バージン」のオリーブ油の先物価格が先週末、7%上昇した。この後の需要増を見越して、市場が敏感に反応したようだ。オリーブ油の最大の生産国はスペイン。同国が昨年最悪の干ばつに襲われため、オリーブの収穫量が落ち込み、元々オリーブ油先物価格の高値が続いていたという。 オリーブ油が多く使われる地中海沿岸の料理は、これまで健康にいいと指摘され、また脳卒中や心臓病、乳がんなどへの予防効果があるとされてきた。今回、オリーブ油に含まれる成分が、炎症を下げる力を持っているとの最新の研究が発表されたことにより、今後消費者のオリーブ油への関心が高まりそうだ。 ■ エクストラバージンオリーブオイル