米国でマーガリンや植物油に含まれる「トランス脂肪酸」の摂取に注意を呼びかける動きが強まっている。取りすぎると血液中の「悪玉コレステロール」が増え、心臓病の原因になると問題視されるようになったためで、ニューヨーク市はトランス脂肪酸の使用を控えるよう市内の飲食店に呼びかけ始めた。
トランス脂肪酸は多くのマーガリンのほか、調理用の植物油、菓子やパンづくりに使われるショートニングなどに含まれる。賞味期限を延ばし、味を安定させるため、植物油に水素を添加して人工的に作り出される。 ニューヨーク市保健精神衛生局は市内の飲食店や食品店に情報を提供して、トランス脂肪酸を含む調理油の使用自粛を呼びかけた。 米食品医薬品局(FDA)も06年1月から、食品のトランス脂肪酸含有量の表示を義務づける。米国人は1日に平均5.8グラムのトランス脂肪酸を取っているといい、摂取の基準値は示さないものの、摂取量を減らそうとする消費者の商品選択を助けることを狙う。 米国女性約8万人を対象にした研究では、トランス脂肪酸を最も多く摂取するグループは、最も少ないグループに比べ、心筋梗塞(こうそく)を起こす危険性が約30%高かった。 日本食品標準成分表によると、国内のマーガリンには、100グラムあたり7グラム程度のトランス脂肪酸が含まれているとされる。米国で最も多いものは同20グラム程度という。 日本マーガリン工業会は、日本人のトランス脂肪酸摂取量は米国人の3分の1以下との研究を引用し、「現在の食生活であれば問題はない」とする見解を公表している。 国立健康・栄養研究所の江崎治・生活習慣病研究部長は「1日15本以上の喫煙者は非喫煙者に比べ心筋梗塞の危険が5倍に高まるとされ、トランス脂肪酸の危険はたばこよりはずっと小さい。ただ、摂取量は少ない方がよく、ケーキやポテトチップスなど、トランス脂肪酸を含む食品を取りすぎないようにすべきだ。パンに大量のマーガリンをつけて食べるよりは、動物性脂肪でもバターを少しだけつける方がよさそうだ」という。