満面の笑み、ダークスーツ、整髪料で固めた髪、浅黒い肌。キア・ジョーラビチアンはマフィア風。彼は昨年からブラジルマスコミに登場し始めた。サッカーに投資したからだ。クラブの多くが負債を抱えていることに気が付き、サンパウロのコリンチャンスの経営権を握ることに決めた。 同氏はロンドン在住でMSI(メディア・スポーツ・マネジメント)という投資グループを経営する。ブラジル紙は、彼には国籍が三つ(イラン、英国、カナダ)、名前が三つ、生年月日も三つあると伝えた。
キアのオファーは破格だった。「負債を帳消しにし、4220万ドルを投入、選手獲得のため半年で最低300万ドルを支払う」。11月24日の経営審議会は大荒れだった。アルベルト・デュアリブ会長が新しいボスにキアを指名した。反対派は激怒、彼の身元と資金源とを明かすように求めたが、二人は聞こえないふりをした。「MSIはクラブを10年間経営し、利益の51%を取り、クラブに49%を渡す」と決まった。 コリンチャンスは1981年以降、決定が集団的に行われる「コリント式民主主義(コリンチャンスはコリント人の意味)」を導入して来た。だが24年後、この名残は少しもない。サポーターは、キアが支払う緑の紙幣に目がくらんでしまった。 「南米最強チームを作りたい」。彼は宣言し、口先だけではないことを12月に証明した。2400万ドルでアルゼンチンのボカ・ジュニアーズからカルロス・テベスを引き抜いた。「最強の選手が欧州に飛ばずにここに残るのを、ファンは喜ぶはずだ」とキアは言った。 さらにポルトガルのクラブからカルロス・アルベルト(FCポルト)、ロジェール(ベンフィカ)を獲得した。南米各クラブの会長らは憤慨している。「選手を法外な値段で買っている。(イングランド・チェルシーのオーナー)アブラモビッチのように市場を乱している」。アルゼンチンのあるクラブ会長は言う。 キアは資金をどこから引き出しているのだろうか。サンパウロのマフィア対策警察は最近、MSIの調査を行った。主にキアとチェルシーのオーナー、ロマン・アブラモビッチらとの関係などだ。本人は否定するが、二人が協定を交わし、テベスが来年チェルシーに移るといううわさまで飛び交っている。