ヤグルマギクは、赤いバラと同じ色素をもっているのに、花の色が青いのはなぜ?『ブルーローズ』:青いバラは存在しないのに!?約90年越しで探究が続いていたなぞを、武田幸作・東京学芸大名誉教授らが解明。11日付の英科学誌ネイチャーで発表した。
ブルーローズ:青いバラは存在しないのに、同じ型の色素を持つヤグルマギクがなぜ青い花を咲かせるのか。90年近く科学者を悩ませてきた難問を、武田幸作・東京学芸大名誉教授(植物生化学)らが解明した。ヤグルマギクの色素の結晶構造を調べたところ、単独では赤いアントシアニンという色素が金属イオンなどと複雑に絡み合い、青い色を出していた。バラにはこの複合体がないと考えられる。11日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。 アジサイやパンジー、ツユクサなど青い花の大半は、デルフィニジン型のアントシアニンという色素をもつが、ヤグルマギクはバラと同じシアニジン型アントシアニンという赤い色素で青色を出している。 アントシアニンは植物の種類によって赤、紫、青などの色を出す。ヤグルマギクのアントシアニンはバラと同じ型で、単独では赤い。色が変わる理由は(1)花びらが酸性かアルカリ性かの違い(pH説)(2)色素に結合する金属イオンの違い(金属錯体説)−−などの説があり、90年近く議論が割れていた。 1910年代にこの色素を発見したドイツの化学者は「細胞がアルカリ性だと青くなる」と説明。だが、日本の植物生理学者、故柴田桂太博士は「金属元素とくっつくと青くなる」と提唱。その後の研究で、ヤグルマギクの青のもとは、シアニジン型アントシアニンに金属や別の色素などが付いた複雑な「集合体」とわかってきた。 武田さんは柴田博士の孫弟子にあたる。ヤグルマギクと同じ色を出す集合体の結晶を人工的に作り、X線で分析。色素や金属の立体的な位置関係まで突き止めた。「先生たちが長年取り組んできたなぞを証明できた。完全な決着をつけられたと思う」と話している。 ヒマラヤのケシ、「究極の青」解明へ 日本と現地の学者 日本とブータンの植物学者らが共同で、ヒマラヤの高山植物の研究を進めている。植物学の世界で「究極の青」と言われる青いケシの花の色が発現するメカニズムを解明するのが主なテーマだ。 研究をしているのは、国立科学博物館の植物学者とブータンの国立生物多様性センターの研究者。同国西部のチョモラーリ山のふもと、標高約4200メートル地点で、ブータン政府の特別な許可を得て、試料用の青いケシを採取した。 花の色は、フラボノイドの一種のアントシアニンという色素と特定の金属が結びつくことで現れる。ただ同じ種でも、生息環境などで違う色が発現することが多く、その理由は分かっていない。 今回の研究では、どういった環境が色の変化に影響するのかを調べ、「究極の青」が発現する真相に迫る。 ブルーローズ:「青いバラ」の着色?に成功=サントリー 『ブルーローズ』実現に繋がる謎、ヤグルマギクの「青」解明 サントリーが遺伝子操作で黄色のトレニアを合成! 「レインボーローズ」オランダ生まれ、虹の花びら