自動車レースの最高峰、F1の開催誘致にトヨタ自動車が本格的に動き始めた。傘下の「富士スピードウェイ」(静岡県小山町)の大改修が完成し、18年連続のF1開催実績を誇るホンダ傘下の「鈴鹿サーキット」(三重県鈴鹿市)と並ぶ最新鋭コースに。鈴鹿での開催契約は来年で満了となるだけに、国際的な販売戦略も絡む2大メーカーの競争が激しくなりそうだ。
◆頂点へ 「我々はぜひここでF1をやりたい」。今年2月、約2年半の歳月と約200億円をかけて大改修した富士の落成披露式で、トヨタの服部哲夫専務は力強く抱負を語った。富士は日本初のF1グランプリ(76年)開催地だが、死傷事故が起きた翌77年のレースを最後に行われなくなった。 トヨタはF1参戦を表明した翌年の00年に富士を傘下に収めた。同社広報部は「世界ラリー選手権、ルマン24時間レースとステップアップしてきた。当然、最後にはF1があります」と、その狙いを説明する。 スポーツ部門を強化する一方、F1人気が高い欧州市場での販売増を目指す戦略の延長上にあるのが、富士でのF1開催だった。今回の改修で、必須条件である「グレード1」のコース認定も取得。だが、同社は「簡単に誘致できるとは思っていない」とあくまで慎重だ。
全長4,563mの国際レース対応「グレード1取得」サーキットに生まれ変わった、富士スピードウェイのレーシングコース。ハイスピードなレースが繰り広げられる最大のポイント、約1.5kmのメインストレートはそのままに、高度なテクニカルコーナーをコース後半に新設します。もちろん、平滑性を追求した路面、ランオフエリアの拡張など、安全面でも世界トップレベルを実現。2005年4月10日、モータースポーツの歴史に新たな1ページを刻み込む富士スピードウェイにご期待ください。
◆実績アピール
対するホンダ。「歴史は金銭では買えない。うちは日本にF1を根付かせ、F1でトヨタに勝るブランドを築いてきた」(同社広報部)という強い自負がある。鈴鹿では87年以来、アイルトン・セナらが名勝負を繰り広げ、90年には鈴木亜久里が3位に入って日本人初の表彰台に立った。関係者の間で「挑戦しがいのある最高レベルのコース」という高い評価もあり、昨年の決勝では過去最高の15万6000人の観客を集めた。 開催契約の延長を目指す同社は「実績をアピールしたい」と意気込む。一方で「富士の設備も一流」と、強力なライバル出現に警戒感も隠さない。鈴鹿市も国際自動車連盟(FIA)に開催継続を要請するなど協力態勢を敷くが、「相手がトヨタだけに市民から不安の声が上がっている」(商業観光課)という。 ◆1カ国2開催は?
鈴鹿と富士両方で開催できないのだろうか。世界を転戦するF1は1カ国1開催が原則。F1解説者の小倉茂徳さんは「開催希望地は多く、FIAなども開催地の分散を望んでいます」と指摘する。昨年から上海が開催地に加わり、韓国も名乗りを上げる。 だが、例外もある。今季はドイツとイタリアで各2開催。日本でも94、95年に鈴鹿と旧TIサーキット英田(あいだ)(岡山県美作市)で開催した。小倉さんは「1カ所でしか認められない『日本グランプリ』をどちらが名乗るのかという問題もある」と話している。 富士 2007年のF1開催に向けて 富士スピードウェイは、30年ぶりにF1カレンダーに戻ってくるにあたり、2007年のメインイベントとなるようなレースを開催できることを期待しているトヨタ所有のこのサーキットは、。富士山のふもとに建設されており、主催者は来年のレースの週末に30万人ほどの人出を見込んでいる。