HOYAはハードディスク駆動装置(HDD)の大容量化技術「垂直磁気記録方式」に対応したHDの量産体制を今秋整え、ディスクにデータを垂直方向に書き込むことによって大容量化を目指す垂直磁気記録方式を採用したHDを量産する。
携帯音楽プレーヤーなどに搭載する1インチ型ガラス製HDをシンガポール工場で量産する。小型ながら、大容量化技術の採用で記憶容量は現行より6割以上多い10ギガ(ギガは10億)バイト以上になる予定。フラッシュメモリーとの競合が進む小型HDDの大容量化にメドをつける。
ディスク面に水平方向に記録する従来方式は大容量化に限界があった。垂直磁気記録方式を採用すれば、デスクトップ型パソコンなどに搭載する3.5インチ型HDDで1テラ(テラは1兆)バイトの製品化も可能という。
垂直磁気記録方式
ハードディスクドライブ(HDD)の面記録密度は、6.45平方cmあたり約10Gビット(10Gビット/平方inch)であったことから、それをより向上させることを目的に日立製作所中央研究所と東北大学科学計測研究所が開発した。 状の記録方式では、ディスクの円周方向に磁気パターンを記録しているが、垂直に記録することで、メディアの記録層を厚くでき、高密度化が進んでも磁気は消えにくした技術の名称。記録膜として多結晶磁性連続膜を用いるHDDでは、面内/垂直のいずれの記録方式においても、ビット境界がサイズや形の不規則な結晶粒の境界を走って不規則なジグザグ状となり、これが再生信号の雑音の原因となることから、記録密度の向上には記録膜の結晶粒を微細化し、直線的なビット境界を得る必要があった。 しかし、結晶粒が小さくなってそのサイズが数ナノm以下になると、熱揺らぎによる磁化の不安定性から、時間経過と共に記録情報が失われるという大きな問題があり、また、再生信号に必要な信号/雑音比を確保するためには、1ビットあたり少なくとも10個程度以上の結晶粒が必要で、これらの制約から連続膜を用いたHDD記録密度には、いずれ限界が来ることが予測されていた。
この限界を打破する新しい記録媒体として、形状や大きさを人工的にそろえた単一磁区の微粒子をアレイ状にならべ、この1微粒子を1ビットして記録を行なうパターンドメディアの研究が行なわれている。
パターンドメディアは同サイズでしかも規則的に配列しているため、1微粒子を1ビットとして記録を行っても再生信号に必要な信号/雑音比が確保でき、原理的には熱安定限界の体積を有するサイズまで微粒子を小型化して、高密度記録を行なうことができる。
そこで日立製作所中央研究所と東北大学科学計測研究所(磁気機能計測分野)は、垂直磁気異方性を有する磁性微粒子を規則的に、6.45平方cmあたり30G個(30G個/平方インチ)配列した磁性微粒子アレイを作製し、熱磁界記録によって1微粒子単位で磁化反転させることに成功した。これは1微粒子あたり1ビットの磁気記録であり、世界で初めてパターンドメディアにより、6.45平方センチメートルあたり30Gビット(30Gビット/平方inch)の高記録密度を実現した。