佐藤琢磨が所属するBARホンダは、F1の車両規定違反で、国際控訴裁判所から2レースの出場停止を受けた。BARホンダはこの裁定処分に従うと発表し出場を目前スペインGPを後にした。
スペインGPが開催されるカタロニアサーキットは、今期BARホンダがコースレコードを持つなど、新しく舗装されたサーキットに最も順応していただけに、逆転出場を狙い民事訴訟を起こして仮処分申請を検討していたが、今回これ以上の政治的闘争に労力を割くのは他のチームやこのスポーツ全体にとっても有益ではないと判断して断念した。
BARホンダは4月24日のサンマリノGPで、バトンのマシンが規定より軽かったとして、国際自動車連盟(FIA)に訴えられていた。BARは予備タンクから抜かれた燃料をマシンの運転に必要な車両の一部と主張したが、受け入れられなかった。
今シーズン初ポイント「4」を獲得したはずの佐藤琢磨はこの裁定でノーポイント。重量違反は予備の燃料タンクをバラスト(重り)として使用したとの解釈だったが「マレーシアですでにタンクのチェックを受けた。FIAは分かっていることだったのに今回の裁定には理解に苦しむと撤収作業が進むカタルーニャ・サーキットで悔しさをにじませた。
この裁定により、サンマリノGPで獲得した10ポイント(バトン6、佐藤琢磨4)も取り消され、2人ともスペインGPとモナコGP(22日決勝)には出場できなくなった。佐藤は「スペインでは十分トップと戦えると期待を持って臨むつもりだった。『何で出られないんだよ』と感じた」と、失望感をあらわにした。次戦モナコGPでも現地入りせず、復帰できる第7戦の欧州GP(29日決勝)までトレーニングを積む。
今回の騒動で慌てて燃料タンクを改修したチームも複数あるという。「チームは不正をしているわけではないと確信している。誤解が世の中に広まらないようにしていきたい」と佐藤。「こうなったら(処分明けとなる)欧州GP(29日決勝)はトップを狙います」と、明るく締めてサーキットを離れた。なおこの日のフリー走行はマクラーレン・メルセデスの第3ドライバー、デラロサが2回ともトップタイムをマークした。
BARホンダへの処分に対する様々な意見 BARホンダに対する国際法廷の“2レース出場停止処分”は正しいものなのか、その議論はサーキット デ カタロニアのパドックでも当然話題となっている。
トヨタのマイク ガスコインは、今回の処分はあまりにも寛大なものであると評している。一方、フェラーリのロリー バーンは少し厳しいものだと考えている。
ルノーのジャンカルロ フィジケラは、BARホンダの行為はスポーツマンらしいものではなく、何らかの処分を受けるべきものであると述べている。また、ミナルディのジャンカルロ ミナルディはガゼッタ デッロ スポルト紙に対して、「ラリーにおいてトヨタが極めて厳しい処分を受けたことが思い出された」と、コメントしている。
一方、かつてのBARドライバーであるジャック ヴィルヌーヴは、今回の件に関して冷静な見解を示している。
「もし、彼らが思いついて実施したことならば処分は正しいものだろう。もし、それがミスであったならば、厳しすぎると思うけどね」
バトンとBARホンダの溝が深まる? BARホンダの不正行為による出場停止はジェンソン バトンとチームとの“心の隙間”をさらに広げるものとなってしまうのだろうか。バトンはシーズン開幕前からウィリアムズチームへの移籍を熱望していた。
2006年はどこか他のチームへ移籍するのかという質問に対して否定しなかったバトン。
「でも、まだ何も言うことはできない。法的にもそれが正しいのかどうか発言することはできないんだ」
しかし、もし彼の気持ちがハッキリしていなかったとしたら、今回の一件が彼の決断に影響することはないとしている。
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