キログラムの基準は、1889年に開催された第1回『国際度量衡総会』で、白金・イリジウム合金の円柱が、キログラムを定義する国際基準であると宣言された。この円柱はフランスの 国際度量衡局(BIPM)に保管され、数個の複製が世界各国に配られている。
オリジナルの国際キログラム原器は清掃のために数回移動されただけだが、空気中の埃などが堆積している可能性がある。時間の経過とともに、数個の複製の質量がオリジナルに比べて徐々に増えてきている。
数人の科学者による提案が通れば、約2.2ポンドの金属の塊である国際キログラム原器は、間もなく時代遅れになるだろう。
科学者たちによると、オリジナルの円柱の質量が変化しているかどうかは不明だという。この物体こそが、他を計測するために使用されているためだ。やはりこれは懸念すべき問題となる。さらには、このオリジナルが自然災害などが原因で破壊される心配もある。
「そこで何らかの定義を行ない、物体ではなくこの情報のみでキログラムを構成できればというわけだ」
キログラムを物理的なモデルで定義することから、相応する定数に切り替えようという作業は、およそ25年間にわたって行なわれている。発表された論文では、アボガドロ定数とプランク定数という有名な2つの普遍定数のいずれかの値を定めることで、キログラムを再定義することが提案されている。
前者は、質量数12の炭素0.012kgに含まれる原子の数を指し、後者は、量子――電磁エネルギーの最小単位――の大きさを説明するために使用されている。
定義法が変われば、キログラムは、そのものが示されるのではなく、選ばれた定義済みの定数を使用した実験によって決まることになる。プランク定数に基づく定義であれば、ある周波数の一定数の光子が1キログラムに相当すると定められることになる。アボガドロ定数に基づく定義であれば、キログラムは、ある元素の一定数の原子と定められるだろう。
提案された再定義のいずれかが選ばれれば、「それが結末ではないか――少なくとも100年間は。現在の方法は100年間続いたのだから」。ただしその後すぐに「何が起こるかわからない」と付け加えた。