フランスの自動車会社ルノーは29日の株主総会で、カルロス・ゴーン日産自動車社長(51)を社長に迎えた。9年前に民営化を終えたルノーにとって、政府任命以外からのトップ就任は初めて。日本で成功した手腕と国際性への期待は大きい。
29日付の仏各紙は1面で「ルノー、ゴーン時代へ」(フィガロ)などと報じ、「凱旋(がいせん)将軍」(リベラシオン紙)への関心の高さを示した。両社の最高経営責任者(CEO)として、世界4位の自動車グループ全体を率いるゴーン氏は、総会での就任あいさつで「私のルノー復帰は、日産復活という任務が完了したことを意味している」と自信を示した。
1世紀以上の歴史を持つルノーだが、経営のトップはゴーン氏でようやく9代目だ。国有化後に6代続いた「ルノー公団総裁」は官職でも重い地位で、生え抜きか巨大企業からの横滑りだった。96年にミシュランから途中入社し、日本で名を売ったゴーン氏は異例のトップと言える。
日産が大株主ルノーにもたらす収益は05年前半で9億5000万ユーロ(約1300億円)。「日産は次の10年もルノーを必要とするか」(ルモンド紙)との不安もあり、ルノー経営者の課題は日産との関係強化。それができるのはゴーン氏だけだ。
ルノーの売上高に占める国外の比率は04年に65%を超えた。レバノン系移民の3世としてブラジルで生まれ、ミシュラン時代に米国を経験したゴーン氏の強みは国際性。日本での成功でカリスマ性は一段と強まった。
高級官僚からルノー入りし、CEOを13年務めた前任者・シュバイツァー氏は各部門に任せる手法。陣頭指揮型のゴーン氏との違いは水と火に例えられている。剛腕イメージに、労働組合は「グループの従業員や工場同士を競争させるようなことは認めない」と身構える。
日産での権威を保ちながら、実質3年しか在籍していないルノーでの信頼をどう築くか。ゴーン氏の手腕と運が、母国で再び試される。