ロボットと宇宙飛行士が協力して日本独自の有人宇宙活動を進めることなどを柱に据えた、宇宙航空研究開発機構の長期ビジョンがまとまった。
実現には技術面だけでなく、財政面でも課題が多く、宇宙機構は今後、市民集会などでビジョンを示し、広く理解、協力を求めていくとしている。
有人宇宙活動では、10年後に、人が乗れる安全なロケットを実現させる。20年後には、宇宙を行き来できる再利用型宇宙船の開発着手を目指す。宇宙船開発は、国際宇宙ステーションに物資を運ぶために08年度に打ち上げる無人補給機(HTV)を基にする。
宇宙では、日本が得意とするロボットや人工知能技術を使い、人間とロボットが役割分担・協力する「日本ならでは」の活動を展開。資源探査や宇宙からの授業などを想定している。月面に長期滞在できる国際基地ができていれば、太陽エネルギーを利用した発電システムの開発も探る。
国の総合科学技術会議は昨年9月の「宇宙開発利用の基本戦略」で「20〜30年後、独自の有人宇宙活動を準備」と盛り込んでおり、これを補強した形だ。
また、現在、ジェット機で10時間かかっている東京と米ロサンゼルスとの間を2時間で結ぶマッハ5クラスの極超音速機の技術開発にも挑む。液体水素を燃料に、二酸化炭素を出さない構想だ。
ただ、課題は山積している。宇宙機構は実現に今後10年間で年平均2500億〜2800億円が必要と試算したが、現在の予算は1800億円。宇宙関連産業の従業員も95年度の約1万人から03年度は約6000人まで減った。
宇宙機構は「長期ビジョンは宇宙開発に対する希望であり、危機感の表れでもある。これをきっかけに内外で広い議論を始めたい」(報告書)としている。