トゥーシング ブルートゥース通信距離が短いから電車やバス、あるいはバーやコンサート会場で見知らぬ者どうしが『ブルートゥース』搭載の携帯電話や携帯情報端末(PDA)によるテキストメッセージのやりとりで仲良くなり、人目につかないところでセックスする。
ブルートゥース対応の携帯電話が他の機器を検知した際、機器の所有者がつけた名前が表示されるという。そして、例外はあるものの、大半のトゥーサーは、何らかの形でその性別を示唆するような名前を使っている。
トゥーシングは、2つの機器で近距離通信を行なうための無線技術、ブルートゥースの機能を利用している。現在では、多くの携帯電話やPDAにブルートゥース機能が搭載されており、ユーザーは近くにある他の同じような機器を自動的に検出できる。
トゥーサーはイギリスで実践されている「ロンドン郊外の通勤圏の町に住んでいる」と、トゥーシー・トゥーシングことジョンさんは語る。「朝晩の通勤電車は遅々としていて退屈で、ピカピカのハイテク機器をぼんやりといじっている惨めな人たちでいっぱいだ。半時間だけの小さなコミュニティーの面々とは、顔は知っていても話すことはない」
そんな昨年の11月に、ジョンさんは電車の中で『アンジェラ』という名のついた機器からテキストメッセージを受け取ったという。その夜、家に帰ってからメッセージに返信する方法を考え出し、翌日それを実行に移した。
「かいつまんで言えば、メッセージはだんだんと色っぽいものになっていった――しばらくして僕は彼女が車内の誰なのかを確信し、彼女も僕のことがわかったようだった――そして、2日後に大胆にも彼女から、いつも降りる駅のトイレの横で待ち合わせようと言ってきた。僕らは会って、セックスをし、そしてトゥーシングが誕生した」
スティーブさんのトゥーシングのきっかけも似たようなものだった。新しい携帯電話を買ったばかりのころ、通勤電車で誰かからメッセージが来た。「退屈じゃない? おしゃべりしましょうよ」というものだった。
「SMS(ショート・メッセージ・サービス)型スパム(日本語版記事)か何かだと思った」とスティーブさんは語る。「電話機の設定をいじくり回しながら、どうすればいいか頭をひねっていると、次のメッセージが来た。『苦労しているみたいね。トイレで待ち合わせしない? どうすればいいか教えてあげる』」
興味をそそられたスティーブさんは誘いに乗ったという。
「鍵はかかっていなかった」とスティーブさんはそのときを振り返って語る。「女の子が……そこでシャツをはだけていた。『これが答えよ』と彼女は言った。そこから始まったんだ」
「トゥーサー」(トゥーシングをする人)によっては、相手の性別や性的指向を識別することも重要な課題となる。トゥーシングに参加するのは異性愛者だけではないからだ。