モバHO!は、Sバンド放送衛星(東経144度赤道上36,000km上空)と、地上の再送信設備(ギャップフェラー)から構成される、ハイブリッドな放送システムで、日本近海の海上を含む、日本全土をカバー、都市部やトンネル内、地下街にも再送信設備を用意し、電車内や飛行機内などの移動体も含む、ユビキタス放送を実現するのが特長。
現時点で、デジタル映像8チャンネル、音声サービス30チャンネル、データ情報サービス約60タイトルが用意され、QVGA(320×240ドット)サイズの有料スクランブル放送を行っている。加入料は2,500円、基本料金400円に、視聴するチャンネルパックを選択する仕組みだ。
今回のPCカードチューナーは、ダイバシティ方式のアンテナを搭載し、持ち運ぶ場合などは中心に折りたたみ省スペース、使用する場合は、外側にアンテナを広げて使用する。
残念ながら放送を視聴しながら、通常のPC操作も可能で、付属の専用アプリケーションにより、録画・再生に対応する。なお、録画した映像は暗号化され、再生には録画した時のPCカードが必要。EPGを備えるが、予約録画はできない仕組みで、あくまで、ライブ放送をモバイルで楽しむことが目的のようだ。
放送フォーマットはMPEG2-TSで、ビデオはMPEG-4となっており、視聴には比較的スペックの高いPCが必要となる。
対応OSはWindows XP
CPU:Pentium 3 1GHz以上、Pentium Mまたは相当品
搭載メモリ:256MB以上
HDD空き容量:30MB以上
となっている。映像を視聴中のPC負荷に関しては、ライブ放送ではなく、録画した映像の再生なら多少は改善されるという。
なお、PCカードに固有のIDで暗号化して録画するため、仮に端末が故障して交換した場合、ID番号が変われば、すでに録画した映像は視聴できない。PCカードが、録画映像を再生するためのキーになるためで、再生ソフトを、例えば自宅と勤務先の別々のPCにインストールしておいて、それぞれで利用することは可能である。デジタル映像に関しては、PCIバスに暗号をデコードしたデータを、そのまま流せない制約があるが、今回の端末は、受信したスクランブル放送を再暗合化して、PC本体に流すため、問題はないようだ。
ノートPCで使用する場合に気になる電力消費に関しては、約1.2mW程度とのことで、同社によれば、「実感では、5時間連続使用可能なノートPCが、半分くらいの2.5時間使用になるくらい」とのこと、実際は、使用するPCに依っても変わってくるだろう。
モバHO!の受信エリア
受信エリアは、衛星放送のため、日本領土をカバーする。衛星は南の空の赤道上空で、東京地方の場合、南南東およそ仰角45度:午前11から12時に太陽が見える方向が目安。なお、日本領土に放送地域を限定するため、周辺部では電力を弱めており、小笠原諸島では受信できない。
室内や地下街などでは、ギャップフィラーで電波を中継することになるが、家庭での使用でも、窓際ではなく電波が届きにくい場合などに、アンプ内蔵の5mの高感度外部アンテナも用意されている(7,500円)。なお、外部アンテナは、東芝、シャープのモバHO!端末の外部端子にも接続可能だ。
同社によると、都内のJR山手線圏内では9割以上の地域で受信が可能としており、資料によれば、中央線、総武線、京浜東北線、東急東横線、小田急線などで、受信が良好としている。その他の路線でも、3月までに大船までの東海道線、西武新宿線などの路線でも対策を予定しており、関西地区でも対策路線を増やす予定という。
モバHO!の今後の展開
PCカードチューナーの発売日は、現時点では未確定だが、「遅くとも1カ月以内」としており、現在は、最終テストと販売チャンネルである量販店との打ち合わせ作業に入っている模様。
2006年に、ANAの機内放送でモバイル放送が採用される見込み(従来は機内にテープを持ち込んでいた)で、将来的に、機内に受信機を持ち込むことに関して、同社では「基本的にモバHO!端末は、受信専用で電波を放出しないため、問題はないとの認識」という。
今回はPCカード型だが、CF型端末については、すでに試作機の開発しており、消費電力が問題になっていた模様。現在、東芝で低消費電力LSIを開発中で、3月に試作品が完成する見込みという。CF型チューナーの開発に関して、「電力消費の問題以外にスペック的な問題はない」とのことで、将来的には、PocketPCなどPDA向けも登場してくる可能性がある。他にも、音声のみのデジタル受信機なども検討しているようで、今後、PCメーカーからチューナーの内蔵モデルが登場する可能性もあるようだ。
地上デジタルとの関係について、地デジでは、ハイビジョン放送も行う12セグメント放送と、移動体向けの1セグメント放送の両方があり、モバHO!と直接競合するのは1セグの放送であり、「放送画質では、上回っていると考えている」と述べ、地デジとは「競合ではなく、共存」と考えている、とする。同社は、3年後をめどに、50万件以上の加入を目指す。
仕様
モデル 「モバHO!」専用PCカードチューナー
(MBT0102A)
サイズ(W×D×H) 約65.4×120.0×20.0mm
質量 約90g
映像・音声仕様 MPEG2-TS 1Mbps (Video:MPEG4、Audio:Codec:AAC)
アンテナ 内蔵アンテナ(ダイバシティとして2個装備)
マイクロアンテナ用接続端子を2個装備
定価 9,800円
東芝、業績低迷のモバイル放送を子会社化して事業改革
−モバHO! は売上高6億円、営業損失112億円
株式会社東芝は30日、同社の持分法適用会社であるモバイル放送株式会社を、3月31日付けで連結子会社にすると発表した。
モバイル放送は2004年10月に、衛星を使った移動体向け有料放送「モバHO!」をスタートさせた。2006年10月時点では東芝、SKテレコム、シャープ、トヨタ自動車株式会社、松下電器産業など91社が出資している。
しかし、業績は低迷。2006年3月期では売上高6億800万円に対し、営業損失が112億2,700万円、経常損失が113億1,800万円となっている。総資産は205億3,600万円、純資産は38億800万円。
これを受けて、主要株主である東芝は「事業改革を進める必要がある」と判断。同社を子会社化することを決定した。
■ モバイル放送=
http://www.mbco.co.jp/
■ 「モバHO!」=
http://www.mobaho.com/