寿命が尽きた人工衛星やロケットの残骸(ざんがい)、破片からできた「宇宙ごみ(スペースデブリ)」による被害を防ぐため、日本など67カ国が加盟する国連の宇宙空間平和利用委員会で、ごみの削減策や安全な管理法を定めた国際指針を作ることになった。
地球の周囲では、数百万個の宇宙ごみが猛スピードで回っており、人工衛星に衝突したり、地上に落下したりする危険がある。各国は2月にウィーンで会合を開き、指針案の合意を目指す。
米航空宇宙局(NASA)の観測データなどによると、地球を回る宇宙ごみは、10センチ以上のものだけで1万個以上ある。小さいものを含めると数百万個以上とみられ、平均で時速3万6000キロの猛スピードで周回している。小さなごみでも衝突の衝撃は非常に大きい。
78年には旧ソ連の軍事衛星の残骸がカナダに落下し、燃料の放射性物質が飛散した。96年にはフランスの小型偵察衛星がロケットの破片と衝突して破損。97年には米国のロケットの燃料タンクが米国の民家に落下した。01年にはロシアの宇宙ステーション「ミール」の部品(計約20トン)が大気圏で燃え尽きずに南太平洋に落ちた。
このため、国連は01年から宇宙空間平和利用委員会で、05年の合意を目標に対策を検討。これまでの交渉で、指針作りの方向が決まった。ごみの削減策や寿命を迎えた衛星の管理、運用のルールを盛り込む見通しだ。
NASAや日本の宇宙航空研究開発機構など11の宇宙機関が作成したたたき台によると、人工衛星などは設計段階から材料や部品を厳選してごみを出さない工夫をする
▽寿命を終えた衛星が高度2000キロ以下の軌道にあれば、制御して安全に海洋などへ落下させる ▽使用済みの衛星が静止軌道にあれば、他の衛星に衝突しないよう、軌道を変更する ▽衛星は運用終了後に爆発・分解しないように燃料を使い切る――などの案がある。
指針ができれば、宇宙ごみを監視して、衝突を予測・警告する枠組み作りを議論する。ロシアなど規制に慎重な国も一部にあるが、各国は2月下旬の会合で指針案の採択を目指す方針だ。
文部科学省は「宇宙ごみ対策はもはや放置できない緊急課題。廃棄する衛星を太平洋に落とす場合、日本上空を通ることが多く、ごみを出さない対策は国益にとっても重要だ」(宇宙政策課調査国際室)という。