トップのNTTドコモとこれを猛追するKDDI。カラー戦略をつぶさに観察すると、両社の位置付けと企業文化が透けて見える。
携帯電話サービス「au」を提供するKDDIは、au design projectから生まれた「INFOBAR」などを中心に端末のデザイン性をアピールする戦略が功を奏して、2003年に新規契約数を大きく伸ばした。KDDIの好調を見たNTTドコモとボーダフォンはともに、2004年に入って、端末のデザイン向上に積極的に取り組むようになった。
特に契約数の純増シェアでトップをKDDIに奪われたNTTドコモが、デザイン性を強調する姿勢には目を見張る。そんな傾向を強く感じたのは2004年2月に発売されたFOMA 900iシリーズからだ。以前に比べ、FOMAシリーズの端末デザインは確実にレベルアップしている。特にNEC製の端末N900iの「アークライン」と称した曲線フォルムは洗練された造形だと感じられる。
造形と同様にカラーデザインも確実にレベルアップしている。N900iに設定されたオレンジは質感、色合いともに高いクオリティーを感じさせる。NTTドコモは、その後もP900iやSO506iSのような着せ替え機種のほか、P252iSやpreminiに象徴されるような小型機種など、デザイン的に面白い機種を次々と商品化してきた。
しかし、デザイン革新を推し進めているNTTドコモも、カラー提案という視点から見ると、いまだに保守的である。N900iのオレンジにしても、N901iCのビターチョコにしても、auやボーダフォンといったほかのキャリアがトライした実績を持つカラーである。このこと自体が悪いわけではないが、新しい色の提案という意味では、造形デザインほどには冒険をしないというのがNTTドコモの基本姿勢のようだ。
携帯電話機におけるこれまでのカラーデザインの歴史を振り返ると、「女性顧客対応のホワイト、ピンク」に始まり、「レッド、オレンジを代表とする新色域の提案」「塗装技術の向上による高彩度色の追求」「インパクト重視のカラートレンドに代わる落ち着きカラーの提案」など、ここ5年ほどの間に数多くの挑戦が見られた。しかし、最近は色そのもので価値や新鮮さをアピールする段階ではなくなっている。未成熟なステージにおいては「これまでになかった」「高度な塗装技術によって実現している」というだけで色の価値を高めることができ、それなりにユーザーも引き付けた。