NECは,2次電池のエネルギー密度とキャパシタの出力密度を併せ持つ有機ラジカル電池を開発した。 既存のLiイオン2次電池の製造設備を利用できるため,低コストで製造できるという。有機ラジカル電池の用途や充放電の仕組み,今後の課題について解説する。
現在使われているLiイオン2次電池に比べて10倍以上の電流密度で充放電できる。試作した電池の大きさは45mm×57mm×4mm程度で,投影面積は名刺の半分程度になる。電流容量は100mAh,エネルギー容量は360mWhである。 試作した電池2つを消費電力9mWの携帯型音楽プレーヤに取り付けると,30秒で充電して80時間駆動できる。4個使えば100Wのパソコンを40秒間駆動することも可能だ。その間にデータをバックアップできる。 有機ラジカル電池は安定ラジカルの酸化還元反応を利用して電気を蓄える新しい原理の2次電池である。活物質であるラジカルの性質を反映して高出力で充放電サイクル寿命の長い電池であることが確認されている。この電池はLiイオン2次電池とほぼ同じプロセスで製造することができるため,既存の設備を利用でき,価格競争力にも優れている。 現在,有機ラジカル電池の活物質として検討している材料は,2,2,6,6―テトラメチルピペリジノキシメタクリレート(PTMA)である。質量当たりの容量密度が111Ah/kgで,Liイオン2次電池の150Ah/kg〜170Ah/kgよりも小さいことが難点となっている。密度の大きな材料を開発して高容量電池を作ることが今後の課題の1つだが,有機化合物は多様なので高エネルギー密度の材料を必ず見つけることができるだろう。 さてこの技術がいつ頃実際に使えるようになるのか・・・技術革新の速度は、企業が営利を目的として開発に投資する以上、その技術を必要とする市場のニーズが高いほど加速すると考えていますので、既存の電池や燃料電池との開発競争だけではなく、この技術が活用できる市場が広がることも重要になりそうです。