P2Pによるファイル交換システムは、コンテンツプロバイダから長らく目の敵にされてきた。しかし、この巨大な流通経路を逆手にとってしまおうというサービスがある。その仕組みとはどんなものなのでしょうか?
暗号化コンテンツをP2Pで流通させるだけなら、自分でダウンロードしたものをメール添付して他人に渡すことも自由。受信ユーザーは別途、コンテンツ・キーを購入して内容を視聴することになる。同方式を採用することで、P2Pネットワークなども配信経路に利用できる可能性がある。
NTTコミュニケーションズと松竹は、共同でショートコンテンツの無料配信サービス「わざアリ」を開始した(記事参照)。ことわざ、金言格言、慣用句など身の周りの「ことば」にちなんだマメ知識を、4分間程度で女性タレントが紹介するという内容。毎週金曜日に3本ずつ、4カ月で60本が配信される予定だ。
興味深いのは、1Mbpsという比較的高画質な動画を、“ダウンロード配信”していること。著作権上の問題から、敬遠されやすいコンテンツのダウンロードを、認めてしまっている。それどころか、わざアリでは「コンテンツをユーザー同士で交換することもOK。どんどん交換してください」(NTTコミュニケーションズ)というのだ。
この背景には、NTTコミュニケーションズの開発したコンテンツ流通ソリューション「NetLeader」がある。これは、コンテンツの暗号化、コンテンツIDの付与、流通経路の把握といった各種技術を組み込んで、セキュアなP2P配信を可能にしたもの。これを導入することで、配信サーバの負荷分散を行い、結果的に配信インフラのコストダウンを図ることができる。
同社は以前から同技術の開発に取り組んでいたが、昨年にプロダクトを完成させていた。サービス展開にあたり、まずは松竹と提携して「わざアリ」で試験運用に乗り出したわけだ。
専用ソフトをインストールする必要なし
それでは、NetLeaderの概要を見てみよう。これは、基本的には動画ファイルをカプセル化するもの。コンテンツを暗号化するとともに、各種情報を付与して、まとめてカプセル化する。
暗号化されたコンテンツを視聴するにあたり、専用ソフトをインストールする必要はない。NTTコミュニケーションズの先端IPアーキテクチャセンタ、第1アーキテクチャPTの小柴聡氏は、「ユーザーには、特別なプラグインを入れさせたくなかった」と話す。
NetLeaderでは、「MicrosoftのR&Dセンターと協力して、WindowsのDRMだけを工夫して使っている」。このため、IE 5.5以上とWindows Media Player7.1以上という、一般的なWindows環境で視聴が可能だ。
映像ファイルとWindows Media Playerは、連携して視聴権(ライセンス)の管理を行う。仮に、ライセンスを持っていないユーザーがコンテンツにアクセスしようとした場合、事業者側のサーバで広告表示なり、課金なりを行った上で、ライセンスを発行する。このライセンスにより、「10回再生」「何月何日まで再生可能」などの視聴制限も可能となっている。
NTTコミュニケーションズの第1アーキテクチャPT担当課長、横田隆氏は、
「ブロードバンドで、映像コンテンツの有料配信は、苦しい。やはり、無料でないと……」
と話す。NetLeaderを、基本的には広告モデルのサービスに活用したい考えのようだ。
たとえば、視聴者同士がファイル交換した場合、ユーザーが入手したコンテンツを視聴しようとすると、いったんは広告ページにリダイレクトされる。ここで、所定のFlash動画なり、静止画なりを視聴した上で、ライセンスを取得する――という流れをイメージしているようだ。
「ダブルクリックと提携しており、静的バナーなどを環境に応じて、最適なかたちで表示できる。たとえば、時期に応じて配信する広告を変えるといったこともできる」
P2P交換は「WinMXや、Winnyで」
それでは、この暗号化ファイルをどのように交換するのだろうか。小柴氏は、既に存在するファイル交換サービスを、自由に利用してほしいと話す。
「WinMXやWinnyなど、使い慣れたP2Pクライアントソフトを利用してもらえばいい。NTTコミュニケーションズとして、独自クライアントを開発してはどうかという話も出たが……。WinMXは、非常に優れていて、勝てない(笑)」。
事業者としては、大元となる配信サーバこそ用意するものの、一度ユーザー同士でファイル交換が始まってしまえば、後は流れにまかせる方式だ。
もっともコンテンツの流通が、完全に事業者の手を離れたところで行われるのも困る。そこで、NetLeaderでは流通経路を追跡するための、以下のような技術も組み込まれている。
まず、コンテンツを「最初に」ダウンロードする場合。ユーザーは、動画ファイルをダウンロードするにあたり、配信サーバに個別情報を送信する。これによって、ダウンロードされたコンテンツには“最初のユーザーの個別情報”が書き込まれる。
次に、そのコンテンツが別ユーザーにダウンロードされ、ライセンス発行された場合。この時、視聴しようとするユーザーの個人情報は、コンテンツ自体に書き込まれた情報と、符合しない。これを認識したコンテンツファイルは、違いを配信サーバ側に通知。これにより、「コンテンツごとの所有者の推移」がサーバ側で把握できる仕組みだ。推移は、何世代にもわたり把握することもできる。
NetLeaderではまた、流通経路でのコンテンツの偽装を防ぐため、コンテンツカプセル内にコンテンツIDを付与する領域も設けている。
「領域はきちんと空けてあるため、cIDf(記事参照)や、MPEG-7に対応させることも可能」
という。
「実績づくり」としてのわざアリ
以上、NetLeaderの技術を見てきたが、説明した全ての技術が「わざアリ」のサービスに適用されているわけではない。現状ではまだ、ユーザーの個人情報は取得していないし、広告表示すら行っていない。
P2P業界で人気があり、飛ぶように出回っている動画ファイルは、違法性の高いものや、偏った趣味のものも多い。コンテンツプロバイダが提供するファイルが、こうした流通経路にスムーズに乗るのか、疑問も残る。
このサービスのメリットはなんと言っても、巨大なファイルの配信に自社サーバーやネットワークの負荷を与えずに流通してくれることと、DRMでがっちりガードして『観たかったらお金払って』が成立する可能性があるところでしょうか?
最近、Tepco光で家電DVDデコーダー(東芝)向けにDVDファイルをネット配信する仕組みや、ケータイではVodafoneが、超流通というPCでダウンロードして観る時に携帯で課金して再生可能にする仕組みがはじまりますが、これと課金のコンセプトは同じですが、やっぱり勝手にファイルがP2Pで流通するPCの世界の方が可能性あるのでしょうか?でも好評で儲かったとは聞きません。。どうなんでしょう???
□ アイドルからのメッセージ!無料動画コンテンツ ...「わざアリ」
http://www.waza-ari.jp/